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俺は高校生だ。
なにか魔法が使えるとか、特別モテるとか、そんな大それた特別なものじゃなくて、ただただ普通の……少し男の子に片想いをしている男子高校生だ。
悠真との出会いも俺みたいに普通で、入学式の席が隣だったからだ。
その時は2人とも強ばっていて、変に天気の話してたっけ。
それから嬉しいことにクラスが一緒、席も見事隣だったからお互い笑いながら入学式のことを語り合って先生に怒られたのを思い出す。
それからしばらくして顔も良し、スタイル良し、性格は……笑っちゃうけど、いいとも悪いとも言えないキラキラしている双子を交えて四人でつるむようになった。
ごくごく普通の日々を送っているさなか、波風が少しばかり頬を撫でることがあった。
いつもつるんでる双子の弟が俺の胸中を突然語り出したのである。
悠真が居ないから話そうと思った、という今から言わんとする事をこちらに悟らせるような言葉から始まり、まぁ、別に陽翔が良いならいいけどさ。というなんともこっちの胸中がわかっている上での意地の悪い言葉で締めくくられた。
この言葉と言葉の間は何故告白しないのかとかだったっけ、実はよく覚えていない。
だけど、それを言われた時の感情はカメラで写したかのように繊細に残ってる。
その感情を一言で言うのならば喜びだった。
この両手に収まりきらない程の溢れ出す気持ちを他人に共有できたことに対する喜びである。
少し話がそれたけど、俺は気持ちを伝えない。
やっぱり何度も何度も告白しようと思ったけど、この先何年何十年一緒に居るって考えた時に少しばかり寄りかかって相談できる良き友人でありたいからやめた。
現状俺が一方的に寄りかかっていて、彼奴は独り立ちできる男前だけど。
それに想いを告げたとして俺の望む関係になることないのだから。
俺は悠真の結婚式の友人代表を狙ってるから尚更!
悠真の幸せを間近で見れる、そんな存在じゃなくてもっと深い相談とか恋人に見せれない顔を見せてくれる友人でありたい。
「おっはよ〜悠真!」
「おはよう陽翔。」
やっぱり悠真の笑顔は眩しいなぁ、こっちまで釣られて笑っちゃう。
悠真も普通の高校生だ、王子とか呼ばれてはいないしファンクラブも無い、俺より少しだけモてる大人しい普通の男の子。
八重歯があって、美術部の悠真。
悠真の描く絵は宝石のように輝いて見える。
どこかの賞に出した方がいいと聞いた時、俺の問いかけに少し被せるように出さない、とぼそりと呟いた
理由を聞いたら、少し俯きがちに誰でも描ける絵だからとそう答えた。
何とか励ましたかったけど、絵の才能に恵まれない俺にはあまりにも役不足で悠真に掛ける言葉が思い浮かばなかった。
少し俯いたばかりに耳にかけていた一房の髪の束が悠真の涙を拭うように頬を伝って垂れた。
悠真の全部、全てが好きなんだ。
落ちた髪を払って、泣かないでと、キスをしたい。
告白してしまおうかな、たった二文字だ。
将来の事を考えず口に出してしまいたい。
そんな事をふと思った。
結局気持ちは伝えなかったけど。
「陽翔、どうかした?」
「ううん、なんでもない。」
普通の日常。
俺はこれでいい、いや、これがいい。
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