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慣れてるから
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彼の名前はイオリというらしい。
ほら、と見せられた櫛に「一織」と彫られている。
立てずに床にへたり込んだままの俺の代わりに客を見送った彼に名前を問うと、何故か可笑しそうにクスクス笑いながら教えてくれた。
ついでに俺のも教えた。
「浅羽京……京でいい」
ずっと『お客様』だと調子狂うし。
「いっくんって呼んでくれてもいいですよ?」
「ねえ、一織はさ」
面倒だとあえて触れないで話を進めると横で座敷を拭きながら「あーっ無視!?」と騒いでいる。
余計面倒にさせてしまった……と思いつつ、それも無視して話を続ける。
「こういうの……その、慣れてるって言ってたけど、どこまで…」
こう、センシティブな質問を聞いていいのか悩んだけれど一織は思ったよりもケロッとして笑った。
「あとの行為は大抵やったよ。でも挿入は京とやったあの一回きり、嬉しい?」
「別に嬉しく……って、た、大抵!?大抵って言ったか!?やっぱりすごいんだな、一織は」
俺は一晩足を舐められただけでこんな有様だっていうのに。
「そう?はは。初めて言われた」
『外へ出たら嫌な顔されてばっかだし』とさもなんでもないことのように付け加えて、雑巾を濯ぎに行ってしまう。
一織は一体いつからこの経験をしているんだろう。
拾われたと言っていたけれど、もう長いのか。
…どんな風に生きてきたらこんなイカ臭い室内でそんな眩い笑みで笑えるんだろうか。
「それより後始末の仕方分かる?あーー、やっぱ初回だしオレも手伝うので流し脱いで浴室に行っててください」
「脱っ!?…いやいいよ、自分でやる」
「え?でもやり方は?」
「し、知ってる…前にやった事あるから」
「……………へぇ、そう。分かった、外で待ってる」
本当は初めてだし、そばにいて欲しかったけれどこの汚い跡の数々を一織にはどうしても見られたくなかった。
滲む視界を気のせいだと思うようにし、ジンジンと痛む足首を何重にも拭う。
…………頼むから、明日には消えていてくれ。
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