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恋愛
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手の甲からはじまって、指の間、手のひら、指の腹、そして爪。
恋の、男らしい手。綺麗に切り揃えられた爪、硬くなった指の腹、この手で、あんなにすごい演奏をする恋。好きだなぁ、大好き。
約束通りキスをする、この手に。
骨の浮き出た、どう見ても男の子の手に。
「愛ー?もういい?」
「もう少し」
「ライブが終わる度に、手にキスすんのなんなの?趣味かよ」
「うん、ふふ、恋照れてる?耳が赤いよ」
「うっせーー!!ほらもーいいだろ!」
恋の手が、俺の手から離れていく。
フラッシュバックするのは今日のライブ。いつもより人の多い視聴覚室で、恋、楽しそうにしてた。俺といる時よりずっと、ずっと笑ってた。恋はきっと、ギターが生き甲斐なんだろう。俺にとって恋が生き甲斐なのと一緒で、恋にはそれしか見えていないのだろう。
「…行くの?」
大舞台。
庄司さんに「連れてって」って、恋が言ってたのは、一体どこ?
それは遠いところ?
わかってる、ほんとは、ずっと分かってたよ。俺にとって恋の傍にいれることが一番の幸せだというなら、恋にとっての一番の幸せはGactのメンバーとして、生きていくことだよね。
恋の邪魔はしたくない。恋の夢は大っきいものだから。だから、もし遠くに行くと言われても受け入れるつもりでいるんだ。大丈夫、俺もいく、俺も傍にいる、大丈夫。
恋、だから、大丈夫だから、そんな言いづらそうな顔をしないでよ。俺、もう返事は用意してるんだ、一言「庄司くんについて行く」それだけでいいんだよ。ねえ、どうしてそんな、決断を濁すの?
「愛は、何してるときが一番楽しくて、一番幸せ?」
「何言ってんの、恋と居るときに決まってんじゃん」
「………そっか。んじゃあお前さ、どーする?俺、来年はこの街に居ないよ」
「うん。俺も行くから心配しなくていいよ?一緒にアパートさがそっか」
「お前、夢は?」
「恋の花婿さん」
「バーカ。はは、うん、分かった。」
……恋?
静かに笑う恋が、今何を考えているのかわからない。
あれ 俺もしかして、間違えた?
なにを?どこが?
好きな人と生きたいと思うことは、間違いかな?
俺のヒーロー、俺の大事な人、考えられないんだよ、お前が居ない世界なんて、必要ないんだよ、お前が居ない街なんて、必要ないんだ、恋が前を歩いていない未来なんて。
恋の腕が伸びてくる。くしゃり、と俺の髪をひと撫でして、そのまま引き寄せられてちゅー。かっこいい、仕草が、態度が、恋が。大好き、大好き、ふわふわの唇、離れていくのは惜しいから、唇と唇が二センチ離れたら、今度は俺が引き寄せて。今度は俺がキスをして。これが幸せなんだけど、これだけで俺は、笑えるんだけど。恋は何を望んでいるのだろう。
「離れんなよ、恋。俺も付いて行くから、逃すなよ。」
「……連れてって、じゃないんだな」
「へ?」
「んや、なんでも。」
大事なことは、いつも聞き逃す。
俺は、大事なことほど見過ごして、後で気づいて、そしてまた恋に助けて貰う。いつもそうだ。
「恋、えっちしよ」
「すげー唐突!今日はどっち?」
「俺が挿れたい」
「あーそ!んじゃー服脱がせてくださいよ王子様ー」
大好き、大好き、大好き、それ以上の言葉があれば、もっと伝えられるのにな。
大袈裟じゃなくて、お前と生きたいだけなのにな。
服を脱がせることも、もう慣れた。
こうやって恋と致すること全てに、慣れていくのだろう。
そしてお前は、俺を許してくれるのだろう。
キスをして、肌に触れて、気持ちいい顔する恋の瞼にまた、キスをして、どこよりも感じてしまう耳を貪って、日が暮れて、夜になって、どろどろに、なって、朝なんて来なくていいから、このまま一つになりたいなぁ。
恋と同じ人間になりたいよ。
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