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気分
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「久しぶり…、だけど、え!なんでここにいんの?」
「ちょっと並愛に用事があって東京から帰って来ててさ。夜まで暇、できたから、なんとなーく高校寄ってみたってわけ!」
「へぇ…?ってまって!並愛帰っ、え?東京?東京出てんの?!」
タバコ、火を消してないのに平然な顔で俺の隣に座る大輝。相変わらず眩しい笑顔で「そーいえば言ってなかったなー」となんて。へえ、大輝も東京かぁ。
「俺も来年から東京だから、遊んでね、オニーサン!」
「恋もこっちくんの!?よゆーで遊ぶけど!」
「んー、っていうか、東京の前に。大輝、夜まで暇だよな?付き合ってよ、俺のおサボり」
「こらこら〜受験生がサボってどーすんの」
「すっげぇアンタにだけは言われたくねぇセリフだわソレ!」
コンクリートにタバコを押し付けて、黒くなったそこを指の腹でなぞる。そしてポツンと置かれてるデカイバケツにポイ。立ち上がると大輝も立って「仕方ない後輩だな」とか言いながらもニヤニヤしてるし、顔がウザい。
「………気分転換、させてよ」
「え?なんつったー!?風の音でなんも聞こえなかった、恋?なんつったーーー??」
「なーんーでーもーねぇよ!カラオケ、ボーリング、ゲーセン!どれがいい?って言ったの!」
「ゲーセン!カラオケもボーリングも大人数のが楽しいだろ?」
「ははっ、だなーー。じゃあ駅前のん行くかー、ってまって、やっぱアンタ身長また伸びた!?でけーよ!!」
俺の隣に並んであるく大輝が、異常にデカく思えた。待って、俺だってチビじゃねぇんだよ?身長、平均男子以上だし、175センチもあるし!でも、でも、大輝の顔をみようとすると、首が痛い。愛より、でけーな、下手したら二年のワカメくんよりあるんじゃねー?…なんかむかつくからゴッ!と肩パンすると、「いってーよ!」と、やっぱり笑われた。ついでに肩パン返しもくらった。骨粉砕したかと思ったんだけど!!
どこか他人行儀な階段を下りる。俺の前に、ゆらゆら、茶色の髪がゆれてる。鳥の巣みたいになってる。せっかくセットしたのに、秋風でボロっボロになっちゃった感半端ないので、俺より二段先の階段を降りてる大輝の肩をぽんぽんと叩いた。大輝が振り向く。
「ん?なに?ぎゃーーーー!!まじ、なに!!」
振り向いた瞬間に、中途半端にボサってる頭をぐちゃぐちゃ!と掻き乱してやった。二段、階段、二段分も身長差があんのか俺らには。あー!イケメンはどいつもこいつも背がデカいなあ?
憎しみ八割、羨ましさ二割。それを込めてぐちゃぐちゃにした髪を、イイ感じになるように直してやった。
「中途半端にぐちゃぐちゃな髪は、一回思いっきりぐちゃぐちゃにしたほうが無造作盛りってのがイイ感じになるんだって宮内が言ってた。」
「マジで!!!宮内って誰かわかんねーけど!じゃあもっとぐちゃぐちゃになるように首でも振り回そうかな!?」
「バーカ!今直してやってんだからじっとしてろー」
うん。ほらみろ。鳥の巣から無造作ヘアーに進化したら、さっきより三割増しでイケメンだ。
「ん、できたできた。じゃ、カバンとってくる。財布とか全部リュックん中だし。先に裏門前まで行ってて!」
「おー?授業中じゃねぇの?今」
「自習中だから平気なんだよー!」
するり、と、大輝の横を過ぎ去るように、少し小走りで教室に向かう。
気分転換、気分転換、
気分転換。
教室には愛がいる。きっと自習中もがっつり勉強してんだろ。
頑張ってる愛を置いて俺は遊びにいくなんて罪悪感ー。でも、大輝なんか超レアキャラだし、遊ばない手はないってもんで。
つーか、うんほら、ごめんやっぱ。
俺、今、愛のこと、考えたくねぇし。
大輝という人間は不思議だ。特別仲がいいわけでもない、顔見知りレベルなのに、なんか話してると気が楽になる。
いいや、いい。今日は遊んでもいい日だ。今決めた。
わいわい騒がしい教室にはいって、自分の白いリュックと重いギターケースをひっつかむ。宮内が「抜けるの?」と、机に頬杖をつきながら、興味のなさそうな顔で聞いてきた。
「深夜のスタジオ練習までには帰ってくるし〜」
「それ、帰るっていわないから。」
宮内にひらひらと手を振られた。
リュックを背負って、出口に向かう。
「それじゃあ受験生諸君!がんばりたまえ!」
クラスみんなに声をかけて教室を出ると、「お前もだろー!」とか「大学落ちろー!」とかヤジが飛んできた。バーカ、俺、大学なんていかねーよ!
……………愛のバカ。
こっち、一回も見なかった、な。
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