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写真
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散々遊んだ後に女の子達の長蛇の列を見つけた。その先にあんのはプリクラ機、プリクラかー、そういえば愛と一回も撮ったことねぇな。プリクラなんか女子じゃあるまいし、Gactで打ち上げとかで撮ったりするぐらいだもんな。そういえばGactでプリクラ撮ろうぜーって話になったのも、庄司くんが突然きまぐれに言い出したからだった。宮内とか撮る写真全部に超真顔の真顔で映ってて爆笑もんだったなーとか、思い出しては懐かしむ。
俺も、今日ぐらい気まぐれで羽伸ばしてもいいよなー?
とんとん、と大輝の二の腕を叩く。硬い、硬すぎる上腕二頭筋にドン引きなんだけど。この人一体、何者なんだマジで。絶妙に整った顔がこちらを向いた瞬間、「あれやりたい」とプリクラ機を指差す。カップルオッケー、男だけはアウト、なんて書かれてるプリクラ機のそばにはたくさん女子が群れてるけど、そのプリクラ機の密集区からすこーし離れたところに二機ほど、男だけもオッケー的なプリクラが置いてある。もちろん人はいなくて、ガランとしていた。俺の指差す方を大輝が見た瞬間。
「女子か!!!!!」
「恋子ちゃんって呼んで!!!」
「名前がダサイ!!」
「待って、お前さっきそのカメレオンになんて名前つけてたっけ?」
「ゴンゾー」
「それよりはマシだから〜!!」
ゲラゲラ笑いながらも、大輝は俺に付いてきてくれた。なんだよ、自分だってプリクラ撮ることに乗り気じゃん!
せっまいブースの中にはいると、香水の匂いが充満していて、臭い。うえっと顔をしかめると大輝が「便所の匂いがする!」とか言い出すからもう、笑いがとまんない。
すげぇなぁ、大輝。
ほんとに、ちょっと気分転換になればいいなー程度に思っていたけど、とんでもねー、超楽しい!
リュックから財布を取り出そうとすると、すっとデカイ手のひらに阻止された。
「恋。ここは俺に任せろ!ゴンゾーのお礼させて!」
「ぶはっ!!そんなキメ顔で言われてもウケるだけなんだけど!?んーじゃあオニーサンにたかっとこーかな、宜しく〜」
遠慮なく、財布をリュックに逆戻りさせる。あーもう、ギターケースがうまく立てかけられなくて苦戦、その間に大輝が百円玉を四枚、コイン投入口に突っ込んでいた。
『画面をタッチしたら始まるよ!』
「恋、タッチしていい?俺がこれ、タッチしていい?!」
「好きにすればー?あ?これ肌の明るさとか目の大きさとか決めれんの?はー、そりゃ女も盛るわ」
「んじゃ俺たちも盛っとこ!」
「あーーーー!なーに一番色白デカ目設定にしてんだよ!そーいうのはオススメが基本だろ!」
「だって女子の気分に『一枚目はかわいくピースしちゃお!さん、に、いち』……え?」
「…ぎゃははは!!あはは!!おま、はは!すげーマヌケな顔で映ってるよ今の!ぽかーんて口開けて!ははっ、あーやべえ笑わせないで」
「なんだこれ!今のなし!ちょ、今のナシ!!」
「ナシとか無いから!」
不意打ちの一枚、大輝のマヌケな顔と俺の後頭部がバッチリ映っていた。女ってのはすげーな、こんな撮影急かされても一瞬で自分の一番可愛く映れる角度で友達と競いあってんだもんなー。なんて、そんなことを考えて次のポーズは何にするか考えていたら、大輝がリュックにつけていた大層ブスなカメレオンのマスコットをぶにぶにと握りながらニヤニヤとしている。
「ほーれ、ゴンゾー真ん中で映ろうぜ!!」
「いらねー!なんだこのブス!」
「ブスっていうな!!!すげープリティじゃん!」
「俺の方が百万倍プリティだわ、見てみろこの可愛いホクロ!」
「頭打ったか?なにそれ食べカス?」
「うっわ!それ言っちゃダメなやつだから〜つーか撮影はじまる!ほらゴンゾーこっち寄せろ!」
『さん、に、いち』
パシャリ、と、目の前が唐突に明るくなる。そういう仕様か。
画面に今撮った写真が移り出されるのを確認すると、大輝の首から上がかんっぺきに切れていた。
「なーーーんーーーでーーーだーーーーー!!!!!」
膝から崩れ落ちる大輝、俺は腹を抱えて笑う。
「はははっ!はは!190近くあるんだからちょっとは考えろよー!マジばか、まーじバカ!」
「まって!もう一度俺にチャンスをくれ!!膝を曲げるから!!」
「ほらほら早く曲げろよ、またすぐ撮影始まるぞー」
そんな調子で六枚撮り終えた。六枚中失敗が二枚、一枚はキメ顔したのに二人ともピントはあってないわブレブレだわで映りは最悪、ほかの三枚は変顔という仕上がりになっていて、大輝のしゃくれ顔はほんと面白すぎて腹筋潰れるかと思った。
出てきたシールを切り分けながら、酷い出来のそれを見てまた爆笑、大輝と遊んでいると笑ってばっかだな、俺。
遊びまわっていたら、気がつけば時刻は18時を少し回っていた。早いな、時間経つの。
「大輝、メシどうすんの?」
「んー?いや、メシはいいや、この後予定あるし」
「そっか。次いつ並愛帰ってくんの?」
「わっかんねー!けど、多分恋が東京に来る方が先だと思う」
「そ。んじゃライン教えて、そっち行ったらメシゴチって貰おー!」
「ったく、ほんっとお前のバンドの奴らどーなってんの!?超がめつい!ラーメン?つけ麺?ソーメン?どれがいい?」
「なんで全部麺なんだよ!」
スマホを取り出して、ラインを開く。二人して全力でスマホをふりふりして、連絡先を交換した。
そっか、大輝があっちに戻ったら、もう当分あえねーなー、っていっても半年ぐらいだけど。
「元気でな。次会うとき二メートルとかになってたら友達やめるからヨロシク」
「なんだそれヒデーーー!…また連絡しろよ、食いたいもん考えとけ!」
「いやん男前ー!んじゃ、俺もスタジオ練習あるし帰るわ、今日、…ありがとな、連れ回したけど超楽しかった!そのカメレオン、やっぱブスだから電車乗る前には取れよ!」
今日の思い出、楽しかったしかねぇなー。プリクラをリュックの前ポケットにつっこんで、大輝に手を振った。
「達者でなーーーーー!!!」
「お前もなーーーー!!!!」
なんて、叫びながら大袈裟に手を振って、俺たちは別れた。
さあ、帰ろ、帰ってメシくってギターさわって、スタジオ練習いって、あ、そうだ。愛にラインして、今日もキス、して、おやすみなさい、かなー。なんて。
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