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学校
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学校へついても、僕が誰かに気づかれるということはありませんでした。
そのかわり、靴箱を開けた途端に、どうやって詰めたんだろうと思うほどのゴミと、「死ね!」「謝れ!」「存在が無駄」などと言った手紙がボロボロと出てきました。
「……素晴らしいほどのやる気が感じられますね……」
思わず本音を口に出すと、あらかじめ予想して持ってきていたビニール袋にゴミをすべて入れ、ついでに中に入っていたもう形が分からなくなった上履きも入れて近くのゴミ箱に捨てました。
上履きは買うだけの時間がなかったので、職員室で借りました。けど、僕に合うサイズのはあまりなく、探すのが大変でした。
──別に、僕の足が小さいわけではありません。皆さんの足が大き過ぎるだけです。
廊下ですれ違う人たちに極力当たらないように歩きながら教室に向かうと、一際大きな集団に出くわしました。男子と女子両方がぐるりと何かを囲んでいるようです。大体予想はつきますが。
「大丈夫〜?」
「無理とか、すんなよ。」
「アイツ、本当マジ信じられない!」
案の上、囲まれているのは惟葉さんで、他の皆さんは心配の声や僕を罵倒する声を発しています。
当の本人は、少し震えながら、精一杯の笑みを浮かべて「大丈夫だよ〜」と言っています。
──本当、演技力だけは一流ですね。
半ば呆れながらその集団を通り過ぎようとした時、僕はその中に見知った顔を見つけました。
それはかなり意外で。けれど、よく考えてみれば辻褄の合う事実でした。
──緑間君……そうか、緑間君は、惟葉さんのことが……。
集団のほぼ中心、惟葉さんの横のところには、いつもの顔に、少しばかりの怒りと心配を混ぜたような顔の緑間君がいました。
その緑間君は優しく惟葉さんの肩を抱き、惟葉さんは緑間君に身体を預けるようにもたれていて。
そんな二人を見ていたら、自然と浮かんでくる黄瀬君の笑顔。
少し前までは、僕と黄瀬君もあんな感じだったのでしょうか。
──幸せそう、ですね。
そんなことを考えていたら痛くなってきた胸を押さえ、僕は一人、集団を通り抜けて教室へと向かいました。
痛くなったその胸は、僕がまだ黄瀬君を愛している証で。
まだ愛しているのかと呆れる反面、
この思いは捨てたくないと思いました。
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