アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
無くなった居場所
-
教室に入っていく生徒に混じって教室に入ると、そこに僕の机と椅子はありませんでした。
代わりにというように埃だらけの床に置かれた黄色い菊の花は、この教室に僕の居場所が無いことを嫌なくらい分からせてくれました。
勝手に震え出す体から、ドサッ、とバッグが落ち、その音で僕は他の生徒たちに見つかりました。
一瞬だけ、流れる沈黙。そして始まる、僕への暴言の数々。
『うわ、あいついつから居たの?』
『あんな事したのに学校来るとか、どんな神経してんの?』
『まじ、同じクラスとか勘弁だわ〜』
一つ一つの言葉が突き刺さり、僕を壊していく。しかし、そんなことおかまい無しとでも言うように暴言は続きました。
『ホント、まじウザいわ。お前。』
何も言わないし動かない僕にしびれを切らしたのか、男子生徒の一人がそう言いながら僕を突き飛ばしました。
「っ!」
突然の攻撃に、僕の体は当然倒れ、僕は呆然とその男子生徒を見ました。
『惟葉な、お前に襲われた次の日、学校に来れなかったんだよ。お前がいないって分かってても、体が動かなかったんだと。その次の日、キセキの世代の緑間とかが説得して、やっと学校に来れたんだよ。そんな惟葉に、お前はなんにも感じねぇのか?………だとしたら、お前、ホントにサイテーだな。』
怒りを含みながらも淡々と紡がれていくその言葉。そのほとんどが嘘だと知っているのは、おそらく僕と惟葉さんだけでしょう。
それに。
──きっと僕がそれを「嘘だ」と言っても、誰も信じようとしないんでしょうね……
自嘲気味にそう思っていたその瞬間。
「……っ!?」
酷い衝撃と痛みが、僕の腹を襲いました。
蹴られている、と判断するのにたいした時間はかかりませんでしたが、それが分かったとしても僕にできることと言ったら、与えられる激痛を耐え続けることしかありませんでした。
最初はその男子生徒一人だけだった暴力が、次第に一人、二人と増えて行き、最終的には何人から受けているのかすらわからなくなりました。
そして、すっかり抵抗できなくなるほど痛めつけられた僕は数人の手によって廊下へと投げられました。
目の前には、最初に話しかけてきた、男子生徒。
『もうマジで、学校来ないでくれる?迷惑してんだわ、俺ら全員。』
いつの間にかボロボロになっているバッグをぶつけられ、「うっ」と小さな呻きをあげる僕を笑う人たち。
『もうココに、お前の居場所とかないから。』
そう言って閉められたドアの向こうから聞こえる大爆笑の声。僕はもうどうやったって、あそこには戻れない。
力の入らない足で無理やり立ち上がり、ボロボロのバッグを持ちながら、僕はもうほぼ無意識にある人に電話していました。
プルルル…プルルル…….ガチャ。
『もしもしー?どしたのーテっちゃん?』
その声を聞いただけで、僕は我慢しきれずに泣いてしまいました。
「っ………た、すけてください……
高尾君………」
こんな僕が誰かに縋ってしまった。
けれど、そうしなければ死んでしまうくらい、
今日の出来事は、僕の心を壊したのでした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
17 / 146