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本当に、
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僕がどうにか話し終わり、高尾君がその内容をほぼ全て理解できた頃。
僕は全力で足を踏ん張っていました。
え?なぜかって?
高尾君が放送禁止並の顔をして何処かに行こうとしているからですよ。
「ちょ……!どこ行こうとしてるんですか……!?」
「んー?wただのトイレだよーwwまさかテっちゃん、俺がキセキを殺しに行くとか思ってんの?wないないwww」
「ただトイレに行くのに、そんな顔する人いませんから……っ絶対彼らのところ行く気満々でしょうっ!」
全体重をかけて足を踏ん張っているのに、ズルズルとどんどん引きずられていきます。それは体格の差であり、力の差でもありました。
──というか、本当に力強すぎですよ…!
「……っ…あ、ほら、トイレ過ぎましたよ…っトイレ行くんじゃないんですか……っ?」
「あー、俺、フツーのトイレじゃう○こ出ないんだよねww相性があってさw」
「そんなものあるわけないでしょう……!ああ、もう本当に………いい加減にしてください!!」
「ブフォウァァオ!!?」
力任せに高尾君の足の間を蹴り上げると、案の定悲鳴を上げて蹲りました。引きずられていたせいで乱れた呼吸を整え、いまだに蹲っている高尾君を引きずりながら、ベンチに移動しました。力が出ないのか、高尾君を引きずるのはとても簡単でした。
「まったく、いきなり彼らのところに行こうとするなんて。やめてください。」
「いや……だから、トイレに…」
「しつこいです。」
「すいません。」
蹴り上げ他ところがまだ痛いのか、ベンチに座ったままうつむき続けている高尾君。かすかに震える彼に、今更ですが少しだけ罪悪感がわいてきました。
「…あの、高尾君。そんなに痛かったですか?……すみません、とっさだったので……」
「………い……」
「……?…高尾君…?」
高尾君が、自分の手を握りしめます。痛いに決まっているのに、構わず、さらに力を込めます。
「…許せない……テっちゃん気づいてる……?俺に「助けて」って言った時、テっちゃんすごく苦しそうな声してたんだよ…?…まるで、いまにも消えてしまいそうなくらい…………テっちゃん何もしてないじゃん……!いままで、ずっとチームの事を想ってきてたのに……たとえそいつらと同じになってもいい。同じところまで堕ちたっていい!その惟葉って女も、キセキの奴らも、帝光中の奴ら全員、立てなくなるくらいぶん殴ってやりたい……!
………っ……許せないっ……!!」
高尾君の目から、ぽたりと。
その握りしめた手から、ぽたりと。
流れ出る雫が、僕よりも僕を心配していて、きっと、僕よりも僕を想ってくれている。それはきっと、僕のキセキへの想いと同じモノ。僕が、いままで一番大切にしてきたはずのモノ。
──…ああ、本当に、僕は裏切られたんですね。もう僕に出来ることも、与えてあげられるものも、なんにも、残ってないんですね……
高尾君の目から、ぽたりと。
その握りしめた手から、ぽたりと。
僕の目からも、ぽたりと。
落ちていくそれは、とても綺麗で、
とても、悲しいにおいがしました。
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