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心の言葉
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二人して、公園で泣いた後。なんとなく気まずいような恥ずかしいような空気の流れる中、僕たちは黙々と帰路を歩き続けました。
道にはもう生徒らしき人たちはいなく、そこでやっと僕はあることに気づきました。
「あれ、高尾君…学校は……?」
そう。僕が高尾君に電話したのは、まだHRも始まる前。高尾君も学生なのだから、当然学校はあります。ということは……
「あー…wwサボっちゃった☆w」
こんな時には必要ないくらいの爽やかな笑顔。そんなところで青春パワーを放出しないでください。
「サボっちゃった☆じゃありませんよ。僕はもう大丈夫ですので、高尾君は学校に行ってください。」
「あ、荷物とかは全然大丈夫だから!wまだ学校行く前だったしwwww」
──あー…本当ですね。口の周りに歯磨き粉が………よほど急いで来たのか、まだセットしてなかったのか、髪もボサボサですね。…というか、今まで気づきませんでしたが、それ、パジャマ……?
高尾君の性格からして、寝ぼけながら歯磨きをしていたら、いきなり僕が出て、話しだけ聞いて着の身着のまま出てきたんでしょう。
「……高尾君らしいですね。馬鹿みたいで。」
「え!?wちょっとちょっと〜wそれ酷くない!?ww」
「これが僕の通常運転です。」
「えー、かずたんショックーww」
「キモいですウザいです消えてください。」
「………(T_T)」
今までパジャマのままいろんなセリフを言っていたのかと思うと、かっこいいようにも思えた数々の場面が、とてつもなく馬鹿らしく思えてきました。
でも。
それが彼らしいところであり、彼のおかげで僕も暗い気持ちにならないで済んでいると考えると、どこか嬉しいような、申し訳ないような感覚がわいてきました。
「……ありがとうございます、高尾君。」
僕は救われた。あなたのおかげで。
「どしたの急に!?w頭打った?ww」
「いえ、真面目な方でです。」
改めて高尾君の方を見上げ、その目を見ながら告げる。
「君がいなかったら、僕は壊れきってしまっていたかもしれません。死んでしまっていてもおかしくありませんでした。」
いつもだったら恥ずかしくて言えない言葉。けれど、ずっと心の中に持っていた本音の言葉。今なら、きちんと伝えられる気がして、僕は言葉を紡ぎ続けた。
「僕を助けてくれたのは間違いなく君で、僕を今でも支えつづけてくれているのも間違いなく君です。……ありがとうございます。」
「……うん。」
僕の本音を全て聞いた後、少し笑いながら頷く高尾君。そして、僕の頭にそっと手を置き、優しく撫でてくれました。
「…でもね、テっちゃん。それはお互い様なんだよね。」
「………え?」
「テっちゃんだけじゃない。俺も、テっちゃんに助けられてきた。小さい頃から、ずっと仲良くて、一緒に遊んで。中学に上がった今でも、この関係が続いてるって、俺、結構すごいと思うんだよね。どんなにたくさんの人と出会って、たくさんの友達が出来ても、そんなこと関係なしに俺と友達ていてくれるテっちゃんのその心に、俺は助けられてきたんだよ。」
恥ずかしそうに、それでも嬉しそうに。頭の上の手を優しく動かしながら紡がれる言葉。それがきっと高尾君の本音で、それがきっと僕たちが辿って来た軌跡。
──それこそ、お互い様じゃないですか。
けど、そんなこと恥ずかしくて言葉に出来そうもありません。代わりというように、そっと拳を差し出すと、コツン、と拳と拳をぶつける高尾君。言葉なんてものは、今の僕たちにはいりませんでした。
言葉に出来ないくらいの、感謝の気持ち。
僕は、それにどうやって答えればいいのでしょうか。
きっと、ただ生きて行くだけでいい。
前を向いて、未来を見て。
そうしながら歩いて行くだけで、きっといい。
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