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『ねぇねぇ、ホントに今日行くのー?危ないってー』
「本当に大丈夫ですから。高尾君は心配し過ぎです。普通に授業を受けて帰ってくればいいだけです。」
朝。電話越しに心配する高尾君。まぁ、昨日の今日なので無理もありませんか。
「授業中は先生もいるので大丈夫でしょう?昼休みや移動時間はミスディレクションを使えばいいはずです。帰るときもそうしていれば問題などないでしょう?……あ、支度が終わりました。」
高尾君を説得しながら、黙々と学校へ行く支度をしていると、いつの間にか全ての支度ができていました。
「ということで高尾君。僕はもう行きますので、電話切りますよ。」
『も〜!テっちゃん頑固なんだから!いい?ホントに気をつけてね?なんかあったらすぐに連絡してね!5秒で駆けつけるから!』
「本当に5秒で駆けつけたら引きますよ。……では。」
電話が切れたことを確認し、携帯をバッグにしまいます。
──荷物が、少ないですね。
いつもなら、当たり前のように用意していた部活用のバッグ。少し前までは、それも持って登校していました。それがいらなくなった今では、軽すぎるバッグが一つだけ。その感覚は、今はまだ慣れません。
「……あ、早く行かないと、……」
わざわざいつもより遅い時間にしたのだから、これ以上遅くすると遅刻してしまいます。
急いでバックを持って、玄関のドアを開けます。確認するように向いた後ろには、誰いない僕の家。
両親はつい先日、仕事により海外へ行ってしまいました。その人たちに心配させたくないと、僕は最後まで現状を伝えることができないままで。
あの日。
『テツヤ……一人で本当に大丈夫か?お母さんも心配しているよ。もちろん、父さんも。』
「…父さん、僕は………
……僕は大丈夫ですよ。心配しないで下さい。」
あの日、とうとう最後まで素直になれなかった僕。両親から、両親が寄せる期待から、逃げ出すことができませんでした。
だけど、今だけは。
逃げ出してはいけない。
「……行ってきます。」
僕は逃げません。
そう、決意を伝えるように、誰もいない家にその言葉を残し、僕は学校へと向かいました。
約束、したんです。高尾君と。
前を向いて、歩くと。
僕は逃げません。
どんなことがあっても、
前を向いて生きていきます。
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