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キレる
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「何で紫原が俺らのクラスに?」
「てか、なんで黒子の隣で仲良く話してるの〜?」
「信じられな〜い!」
ザワザワ。
「きっと騙されてるんだよ」
「てかそれしかねぇだろ。」
「え〜!まじ最悪じゃん!」
ザワザワ。
先ほどからうるさい程ひそひそ声の飛び交う教室。話の内容は、勿論僕と紫原君。どうやら紫原君は僕に騙されていて、僕は大嘘つきの最低野郎らしいです。
──止めても無駄だろうなぁ……
そう思ったので、特に止めることもなく、先生が来るのを待っていたのに。
ガシャーン!
紫原君の足によって、椅子と机の何個かが派手に倒れました。
──あーあ。ついにやっちゃいましたね…
紫原君が限界に達してしまいました。
「うるせぇんだよ。」
──え、あれ?この口調…まさかキレて……
それだけで、一気に静まる教室。紫原君のキレた時を知っている人は青くなり、知らない人は少し怯えた顔をしていました。
「マジでうざいんだけど。ブツブツブツブツ悪口とか言いまくるとか。はっきり言うかなんかしろよ。それが出来ねぇんなら黙ってろ。はっきり言った奴は俺が潰してあげるから、安心して言っていいよ。」
紫原君は、その行き過ぎた体の大きさや目つきなどから、喧嘩をふっかけられることもなく、面倒くさいことならすぐ諦めるというその性格もあってか、キレることはほとんどありません。しかし、だからこそ、キレた時の彼は並大抵の人では止めようがありませんでした。
──確か、前回キレたのが中一の夏休みでしたか……
その時のことを思い出した僕は、シンとした教室で一人小さく震えました。
紫原君がキレたきっかけは、馬鹿な先輩数人の行動でした。まだ中一と舐め切っていた先輩は、「頭に乗り過ぎ」と言い、あろうことか紫原君の持ってきていたお菓子全てを燃やし、さらには赤司君の悪口まで言いました。
……結果、教室は一時血だらけとなりました。
先輩達は少なくとも二箇所以上を骨折し、顔は原型をとどめなかったと言います。更に、止めに入った他の生徒数名も飛んできた机に当たり軽傷を負い、落ち着かせようとした体育の先生が殴られました。
結局、騒ぎを聞いて駆けつけた赤司君によってその場はおさめられ、夏休みということと、赤司君が口止めしたということで騒ぎはそれ以上広がりはしませんでした。僕は途中で赤司君を呼びに行ったので最後は見てませんが、それは本当にひどかったらしいです。
そして、その悪夢のような状況が今まさにこようとしているのです。
「紫原君。落ち着いてください。」
「無理。」
──即答ですか。少しイラッときますよね。
そして、また沈黙が続……こうとしたその時。
「……、ハッ。馬鹿なんじゃねぇの?てめぇら。」
馬鹿な男子生徒が一人。少し怯えながらも紫原君に楯突いてしまいました。
「なんで同級生なんかにビビらなきゃいけねーんだよ。紫原。てめえはただでけぇだけだろ。いっつも虫みたいに赤司の後をついて行ってるくせに……赤司も赤司で金持ちだからってお高く止まりやがって………」
その瞬間。僕が紫原君を止めようと立ち上がったのと、紫原君がすごい速さでその男子生徒を殴ったのが同時でした。
「ちょっ……紫原君!」
──遅かった─!
「おいテメェ……今なんつった?」
いつもの口調など既に欠片もなく。ただただ本気のキレ声で睨まれた男子生徒は、あまりの恐怖に座り込んで震えていました。しかし紫原君に胸ぐらを掴まれて持ち上げられ、途端に苦しい表情をします。
「なんつったんだって聞いてんだよ!!」
「う……ぐっ…!…かっ……」
「紫原君!紫原君!!やめてください!」
急いで紫原君を引き剥がそうとしますが、僕と紫原君では力の差は劇然。叶うはずもなく、紫原君はピクリとも動きません。
──くっ……!こうなったら………
辺りを見回し、手近にあった黒板消しを力の限りに手で押し出します。押し出された黒板消しはものすごいスピードで紫原君の頭に──
ゴスッ!!
──ごめんなさい、紫原……
紫原君が倒れる音が、教室に響きました。
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