アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
同類
-
「………、…ええっ!?」
ほんの少しの間続いた沈黙を破ったのは、高尾君でした。紫原君は言った意味がいまいち理解できていないのか、ポカーンとしています。あ、でも、お菓子を食べる手は止まっていませんでした。
「え、ちょ、まって?待って待って……んん?どゆこと?え?つまりは、あいつらを倒したのがテっちゃんってこと?ええ??」
「高尾君、落ち着いてください。あくまで『おそらく』の話です。僕だって確証があるわけではありません。」
「う、うん、待って、今落ち着くから……スーハー、スーハー、スーハァァァ……お、落ち着いたと思うと思ってるけどどうだと思う?」
「落ち着いてませんね。」
「高ちん落ち着きなよ〜。たかが黒ちんがその人たちを倒したってだけなんでしょ〜?」
いつの間に再起動したのか、ポリポリとお菓子を食べながらの紫原君の発言に僕ら二人は固まりました。
──た、たかが?
「たかが!?え?はぁ?今なんて言った?」
僕が驚くと同時に驚いた高尾君が、半分裏返ったような声で言った言葉に思わず頷くと、またしても紫原君はなんでもないような顔で、言い放ちます。
「だから〜、その人たちを倒したのが黒ちんだったってだけなんでしょ?」
「そ、そうですが、なんかもっと……」
「どうやって倒したのかとか、そんな力どこにあるのかとかさ、あるじゃん!」
「そ、そうですよ!」
そう言うと、紫原君はわからないというように首を傾げ、今度は、
「だからさ、二重人格なんじゃないの?」
と言いました。
──僕が、二重人格!?
けれど、言われてみれば、一番しっくりくる言い方でした。
僕にはない力。
暴力を振るうという行為。
僕が覚えていないということ。
「……もしかしたら、あの時僕が酷く拒絶したから、それに反応して……」
「多分そうだと思うよ〜」
しれっと言う紫原君すらも気にならないくらいの衝撃でした。二重人格なんてそうそう信じられるものではないし、いきなり生まれたのか、それとも前からあったものなのかもわかりません。
「二重、人格…」
ぽつりと行ったその言葉がじわじわと広がり、ふいに気絶する寸前に見た僕らしくない僕のことを思い出しました。
もしかしたら、あれが。
──もう一人の、僕……?
「……い………おーい、テっちゃん、テっちゃん!」
しばらくの間固まっていたのか、ハッとして瞬きをすると、不思議そうに僕の顔をのぞき込む高尾君と目が合いました。
「何?どしたの?もしかして二重人格であってるの?」
「え、……あぁ、おそらくそれであっています。」
「マジで!?」
「ほら〜。」
少し自慢げにお菓子を食べる紫原君を疑わしげに見つめ、「え?……まじ……?ホントに…?」と呟く高尾君。高尾君からすれば、僕が二重人格ということよりも、むしろそれを紫原君が当てたということが信じられないのでしょう。
──確かに、まるで知っていたかのような口調でしたね…………まさか!?
「紫原君!もしかして、僕以外に二重人格の人を知っているんですか……!?」
思わず身を乗り出して言えば、ポリ、とお菓子を食べる手を止めた紫原君が、口の中のお菓子を食べきってからいいました。
「……うん、知ってるよ〜。」
「えぇ!?マジで?」
「誰ですか!?」
「黒ちんも知ってる人だよ〜?高ちんも多分知ってると思うし〜。」
──僕も高尾君も知っている人!?
いくら知人を思い浮かべても分からず、しばらく高尾君と唸っていました。
僕の知っている人で、二重人格のように突然性格が変わる人……
「……!…もしかして、それって……」
一人。一人だけ、思い当たる人を思い出しました。でも、あの人はいつも普通を装っていたから、その小さな変化も気をつければわからないほどでした。
「そう。
二重人格を持ってる人はね……
赤ちんだよ。」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
49 / 146