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会話
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目を開けると、そこは真っ暗でした。
「ここは…何処でしょうか。」
声はやけにくぐもって聞こえ、真っ暗なはずなのに自分の体は見えました。
「誰も……いないんですか…?」
思わずそう言っていました。返事など帰ってこないとわかっているのに、口を閉ざしているのがなんだか怖く感じました。
「だ、誰か……」
暗闇が怖くて、無我夢中で走りました。しかし、走っても走っても僕の周りには暗闇があるだけで、だんだんと本当に走っているのかも分からなくなってきました。
「ハァ、ハァ、ハァ………だれか………高尾君………紫原君………
…………黄瀬、君…」
どんなに呼んでも、どんなに走っても、誰もいない。何もない。ただ、僕の声だけが暗闇へと消えていきました。
「や、やだ……誰か……誰か……!」
《なんだ?》
「ひっ……」
急に聞こえてきた声に、危うく叫びそうになりました。恐る恐る声のした方を向くと、そこにいたのは──
「………ぼ…く……?」
僕が、いました。
《なんだよ。そんな驚いて。俺なんかおかしいか?》
細い体、白い肌、水色の髪、死んだような目。どれも僕と同じもののはずなのに、明らかに僕ではありません。
直感的に、彼が僕のもうひとつの人格の僕だとわかりました。
「…あなたは、僕のもう一つの人格てすよね。」
《そう。俺は黒子テツヤ。お前も黒子テツヤ。おんなじ体の中に存在する。》
「やはり……」
《まぁ、とりあえず座れば?》
彼がそう言うと、暗闇に突如として現れる二人分の椅子。僕が驚きに固まっていると、彼はなんにもないように椅子に近づき、きっちり一人分をあけて座りました。
《ん。》
ポンポンと椅子の空いているスペースを手で叩く彼。どう見ても僕に座れと言っているようなので、大人しく座りました。
「……ここに、慣れてるんですね」
《ここ?》
「この暗闇しかない空間です。」
ああ、と納得したような顔をする彼。続けて彼の言った言葉に、僕は唖然としました。
《俺、ここで生まれてずっとここにいたから。大体どうなってるかとかは分かるよ。つっても、こんなことできたの初めてだけどな。》
無邪気に笑う彼は、一体どれほどの時間をここで過ごしたのでしょうか。この、光さえ届かない暗闇で。
それなのに、こんな真っ直ぐで。
僕とは本当に違います。
僕は、そんな彼に、
本当に憧れました。
僕もこんなふうになれたら、
きっと、きっと……
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