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白い天井。
目を開けると最初に入ってきたそれを理解するのに数秒を要して、やっと僕はここが病院ということを思い出しました。上半身を起こして窓を見るともう十分に日は昇っていて、そこまで熟睡していた自分に驚きました。
幸い、夢の中でのクロさんとの会話も忘れることはなく、早く二人に伝えたいという思いでいっぱいでした。
しかし、二人が来るのはまだまだ先で、それまで何かしようにも何もすることがなく、僕はすぐに暇になりました。
「暇ですね…………」
もう一度寝ようと横になっても全く眠気はやって来ず、しばらくボーっとした後、飲み物を買うついでに少し歩こうと思いました。
「この病院って、庭とかあるんでしょうか………っつ、あ、いっ……!」
ベッドから出ようと足を動かしながら方向転換した瞬間、腰の辺りと体中に凄まじい痛みが走り、僕は思わず悶絶してベッドから転がり落ちました。助けを求めようにも部屋には誰もいなく、声をだそうにも腰が痛すぎて声が出ず、ナースコールボタンを押そうにも手が届きません。
なぜこんなにも体が痛いのか。普通に考えればすぐに思い出せることですが、あまりにも混乱しすぎていた僕にはさっぱりわからず、それがかえってさらに混乱を招いていました。
「いっ……あ……ぐ、ぅ………はっ……」
──痛い痛い痛い!誰か、助けて……
そう思っても助けは来ないまま、十分ほどたった頃、痛みが収まってきたのを見計らって僕は決死の思いでナースコールボタンへと這っていきました。
痛みと戦いながらなんとかボタンを押すと、「どうしましたか」とどこからか看護婦さんの声ご聞こえました。しかし、それに答える体力など最早残っておらず、返答がなかったのでやって来た看護婦さんと担当の医師の方によって助かりました。
どうやら僕は襲われる他にも殴る蹴るなどの暴力を受けていたらしく、安静にしてなさいととても怖い顔で怒られました。
「でも先生、どうしても外に出たいんです。庭に行きたいんです。暇なんです。お願いします。」
そう言って粘ると電動車椅子を貸してくれ、それが案外使いやすかったのでしばらくはそれで過ごすことになりました。
──腕の筋肉がない僕でも車椅子に乗れる日が来るとは……なかなか楽ですね。
看護婦さんに庭の場所を教えてもらい、できるだけ広い道を通りながらそこへ行くと、意外にも病院の庭が広いことにいささか驚きました。
まるで結婚式場のように華やかで、しかしとても安らぐ、不思議な感覚。まさに、病院にふさわしい庭でした。
聞いた話では、庭のすぐ横には子供連れの人のために公園もあるらしく、改めてこの病院の敷地の広さに驚きました。
「公園、行ってみようかな……」
先程から楽しそうな声が聞こえ、それに混じってわずかに聞こえるボールの音。見なくてもわかる、バスケの音。
無意識に車椅子を回転させ、公園へと向かっていました。公園の囲うように植えられた木がサワサワと音を立て、木々の隙間から差し込んだ光がとても暖かく感じました。
まるで森の中のような空間がしばらく続くと、急に開けた場所に出ました。そこだけはアスファルトで、すべり台や砂場、ブランコなどが密集した遊具広場の他にもう一つ、柵で囲まれたバスケのコートがありました。
そしてその中に、影が二つ。競うように動き、交互に両方のゴールへとボールを入れ合うその姿に、思わず目を奪われました。
──1on1、ですね……そして、速い……
魅入られたようにそれを見続けていると、疲れたのか、二つの影が止まりました。
明らかに才能を持ったその二人の姿をどうしても見たくなり、見つからないように近づいていきました。
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