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報告2
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僕の影の薄さなら大丈夫だとは思いますが、念のため木の陰に隠れながら二人を除きました。
二人は仲が良いのか、隣同士に座りながら話していました。一人はメガネをかけていて、目が細いのか笑っているように見える人。もう一人は楕円形の短い眉毛をした、性格に難アリに見える人でした。
「フー……またワシの勝ちやな。」
メガネの人が少し訛った声で笑います。
「ハァー……先輩の癖に手加減とかないのかよ。」
どうやら勝ったのはメガネの人の方で、眉毛の人(←言い方がほかにありませんでした。)は不機嫌そうに汗を拭いています。
「ん〜?十分に手加減してるつもりなんやけどなあ。これだけじゃ足りんかった?」
「ふはっ。……上等ですよ、今吉先輩。」
休んだばかりというのに立ち上がる眉毛の人につられて、メガネの人も立ち上がりました。
「アカン、火ィつけてしもた?」
そう言いながらもどこか楽しそうなメガネの人。そしてその言い方は、さらに眉毛の人に火をつけていました。
「火なんてつくわけねぇだろ、バァカ。」
「ほー。これがツンデレっちゅうやつやな。可愛ええ可愛ええ。」
「………ふはっ。よし、殺す。」
眉毛の人の怒りを最高潮まで上げるメガネの人。先程よりさらに笑っていない笑顔を作りながら話す眉毛の人。見ててこちらが焦ってしまうような空気の中、次の言葉に僕は心臓が止まるほど驚きました。
「やってみいや。……あ、それとそこのギャラリーさん。隠れとるみたいやけど、出てきてもええで。」
想定外の発言。しばらくの間、僕は言われたのが僕だと分かりませんでした。
「……………え?え、僕ですか?」
「せやで。」
少し遅れて返事をすれば、当たり前のように言われまた驚きました。
「なんだ、お前も気づいてたのかよ。」
残念そうに言う眉毛の人。
「もしかして、二人とも気づいて……?」
「「まあな。」」
驚きのあまり呆然としていると、「とりま、こっち来れば?」と言われたので、とりあえずコートの方へと近づいていきました。
近づくにつれて、だんだんと顔がはっきりと見え、眉毛の人が花宮さんという人ではないのだろうかということに気づきました。
「あの……もしかしてなんですけど、花宮さんですか……?」
「え?そうだよ。初めましてのはずだけど、なんで知ってるのかな?」
──あれ?先程と雰囲気が全く違う……?何と言うか……好青年?
「あ、えと、以前バスケの話で耳にしてので……」
そう。彼の話は赤司君が昔話していました。
花宮真。
成績もさることながら、運動──特にバスケで才能を発揮する一つ年上の強敵。通常ならとてつもない才能ですが、赤司君たち「キセキの世代」が現れたおかげで「無冠の五将」と呼ばれた五人のうちの一人。実は、僕がレギュラー入りしていなかった頃からレギュラー入りしたあとも、何度か帝光中と試合で当たっていた事もありました。
「なんや、エライ有名やなぁ、花宮。」
相変わらず笑顔を崩さないメガネの人。
──そう言えば、この人の話も聞いたことがあるような……そうだ、赤司君があの時一緒に言っていた……
「……そう、そうです、思い出しました。あなたは、今吉さんですよね……?」
「ん?ワシのことも知っとるん?」
今吉翔一。
花宮さんと同じく成績も運動もずば抜けていて、かなりの強敵。花宮さんと同じ学校同じ学年。頭の回転が速く、相手の行動パターンを読むことから、一部からはサトリとも呼ばれていたそうです。その総合能力の高さからリーダーに任命されチームをまとめ、いつも上位にランクインさせていました。
「有名ですよ。お二人ともすごく強いって聞いてます。」
「ふーん。…誰から?」
悪気のない今吉さんの言葉に、過剰なくらいビクッとしました。同時に、僕はもうあそこに戻れないことを思い出し、何を今更と不思議なくらいおかしく思えました。
「あ、えっと、友だ……知り合いからです。」
うっかり友達と言ってしまいそうになるのを堪え、出来るだけ冷静に、何事もなかったように話しました。
「………なるほどな。」
それを察したのかはわかりませんが、今吉さんがそれ以上深く聞いてくることはなく、こっそりと胸を撫で下ろしました。
「……そう言えば、君、名前は?」
ニッコリと笑いながら切り出してくる花宮さん。その雰囲気の違いに馴染めないまま、戸惑いながらも答えました。
「黒子…テツヤです。」
「そうなんだ。黒子君……なんか言いにくいからテツヤ君でいいかな?テツヤ君はバスケ部?」
「あ、はい。そうです……いえ、そうでした。」
「やっぱり。じゃあ──「花宮。」…ん?」
話を遮るように花宮さんを止めた今吉さん。その今吉さんへの返し方にもまた違和感を感じ、僕の頭はクエスチョンマークでいっぱいでした。
「さっきからやけど、バレとるで。」
「「え?」」
いきなり何を言い出したのか、僕も花宮さんもさっぱりわかりませんでした。
それが伝わったのか、溜息をついた今吉さんが眉毛を下げて笑いました。
「黒子クン、もうお前の本性知っとるで?自分、気づいとらんかった?」
「……嘘だろ?」
「ホンマや。なー?黒子クン。」
「……えっ?」
そこで僕に話を振るとは思っていなかったので、本日何度目かの「え」をまた言ってしまいました。
「黒子クンさぁ、コイツなんか雰囲気ちゃうなぁと思ったんちゃう?」
先程から思っていた疑問を当てられ、些かびっくりしました。どうやら、サトリと言われているのは本当のようです。
「ええ……先程と雰囲気が大分違うなぁとは思っていましたけど……」
「ほらな?つまり、お前は本性バレとんのにバレてないと勘違いしてたっちゅうわけや。アホやのー。」
すごく煽られているのに黙ったままの花宮さん。その沈黙が逆に怖く、冷や汗をかきながら様子を見守りました。
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