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報告3
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「……チッ。」
しばらくして、花宮さんの口から舌打ちが聞こえてきました。
「お前マジ使えねぇな……そーゆーことは早く言えっつうんだよ。糞が。」
──うわぁ……
予想をはるかに上回る毒舌ぶりに遠い目をしそうになるのを必死に堪えました。
「……花宮、正体バレたからって、いきなりソレはアカンちゃうの?見てみぃ、黒子クン遠い目してるやん。」
そう言われ、堪えられていないと知ったと同時に花宮さんと目が合い、なんだか凄くガン見されました。
──なんでしょうか……?
「さっきから思ってたんだけどよ……俺、お前のことどっかで見たことあるような……」
「なんや、顔見知り?」
「んー、話したことはねえと思うが……テツヤ君……もうテツヤでいいや……テツヤ、どこの中学のバスケ部だった?」
──なんか、さっきからどんどん呼ばれ方が親しくなっていくような……というか、中学校のこと、出来れば言いたくありませんでしたね……
「……帝光中です。」
「「帝光中……!?」」
驚く二人。まあ無理もないでしょう。帝光中はバスケでは有名すぎる中学。キセキの世代も存在する、おそらく最強の中学なのだから。
「……思い出した。黒子テツヤって、試合に出てた影の薄い奴だ。」
──影の薄い奴って、随分と失礼な……
「……そうです。君たちとも当たったことがあります。」
それはもう見事に忘れられていましたけどね。
「んなら、黒子クン、幻の六人目……?」
「そう呼ばれているんですか?」
自分にそんな名称が付いていたことに、とても驚きましたが、「六人目」ということは、僕はキセキの世代に入っているのでしょうか。
しばらくそのことで驚かれましたが、とりあえず座ろうと落ち着きを取り戻した二人とベンチに移動しました。
僕は車椅子に座っているので大丈夫ですと答えると、今まで車椅子に乗っていたのを忘れていたのか、またもや驚かれました。
「そう言えば、バスケ部「でした」って言ってたよな。……その、怪我のせいか?」
──違いますが、なんて言えばいいのでしょうか……惟葉さんたちのことは、出来れば言いたくありませんし……
考えた結果、結局いい答えは見つかりませんでした。
「……いえ、違います。バスケ部は強制退部処分を受けましたので……怪我はそのあとにできました。」
「……そうか。」
「……すまんのー、花宮が空気読まん発言して。猫かぶっとる時は可愛いんやで?」
「ふはっ。気色わりぃ。」
あえて何も聞かないでくれる花宮さん。その後も空気を和らげてくれる今吉さん。
本当は、二人ともすごく優しい人なのでしょう。その証拠に、なんだか胸がぽかぽかしました。
「二人とも仲がいいんですね……っと、すみません、携帯が……」
ポケットに入れておいた携帯がバイブしていることに気づき、名前を確認すると高尾君でした。時計を確認すると三時を過ぎたあたりで、高尾君が病院に来たのだとわかりました。
「……もしもし、高尾君?」
『ああ、テっちゃん?いまどこ?病院の人が庭に行ったって行ってたから庭に来たけど、どこに行ったのさ?』
「すみません。今は公園にいます。」
『ええ?公園なんてある?なくね?』
確かに、公園の存在を知らなければどこにあるかなんてさっぱりわからなさそうです。
「林に囲まれてるんですよ。今からそっちに戻ります。」
通話を切り、携帯をしまってから二人に向き直りました。
「友達か?」
「はい、お見舞いに来てくれたらしくて……そろそろ失礼します。」
「なんや、少ししか話せんかったなぁ。ワシらほとんど毎日ここに来てるさかい、また会えたら話そうなぁ。」
「はい、楽しみにしてます。」
笑顔を返してくれる二人に小さくお辞儀をし、僕は出口へと車椅子を回転させようとしました。
ところが。
「…………電池切れです。」
「「は?」」
車椅子の充電が切れてました。これでは、電気車椅子ではなくただの車椅子です。仕方なくタイヤの所についている取っ手を回して進もうと思い、体制を前かがみにしました。
「……っ!!ぐっ…ぅ……い…」
「テツヤ!?どうした?」
──忘れてました、傷のこと……
あまりの痛さにうずくまる様にすると、バランスが崩れ僕は車椅子から落ちました。それが更に痛みを連れてきて、僕は声を出すことすら出来なくなりました。
「黒子クン!?傷、痛いんか?」
「テツヤ!」
──高尾君に、電話、して…
口を必死に動かし言葉を吐き出そうとしますが、出てくるのは吐息だけで、痛さと苦しさと悔しさに涙が出ていました。
と、携帯のバイブが再度鳴り、直感的に高尾君だと思いました。
「…け……た…」
「なんか言っとるで!どないした!?」
「…け……た……と…て…」
──携帯を……
それが今吉さんに伝わり、「携帯な!」と電話に出てくれました。
『もっしー?テっちゃん?公園ってそんな遠いの?今どこー』
電話の相手はやはり高尾君でした。
「君、黒子クンの友達?ワシ、今吉ゆうんやけど。」
『は?今吉?誰?テっちゃんは?』
「おるんやけど、なんや苦しそうにしててな。申し訳ないんやけど、迎えに来てやれん?」
『!わかった!で、公園ってどこ?』
「……そっからなら、ワシらが連れてった方が良さそうやな。せや、そうするわ。君、今庭園にいるんやろ?黒子クンそっちに連れていくわ。」
『あ、ああ、じゃあ頼んだ。』
「任せとき。」
パタン、と携帯を閉じ、僕のポケットに携帯を入れてくれました。
「ワシが車椅子運ぶさかい、花宮は黒子クン運んでや。」
「わかった。テツヤ、ちょい痛いかもしんねぇが、堪えてくれよ。」
花宮さんが僕を持ち上げると、鋭い痛みが体を走り、思わず呻いてしまいました。それでも、慎重に持ち上げてくれたのか、予想していた痛みよりは痛くありませんでした。
「できるだけ痛くねえようにするから。」
その言葉の通り、移動している間は全く振動が伝わらず、痛いと思うこともありませんでした。
──やはり、二人とも優しい人だ……
痛みが引いていないのに、僕はそんなことばかり考えていました。
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