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復讐
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その後もわいわいとした雰囲気は続き、面会時間が過ぎて看護婦の方が注意しに来るまで、騒ぎが落ち着くことはありませんでした。
まだ風呂は無理だということで食事を取り、他にもやることを全てやり終わりましたが、消灯時間まではまだかなり時間がありました。
──そうだ……本でも読みますか。
こうなることを見越して持ってきた本を取り出そうとバッグに手を入れた時、携帯から振動が伝わりました。長さ的にも、電話のようです。
「……非通知……?」
そのことを不思議に思いつつ、受信ボタンを押して携帯を耳元に寄せました。
この後、僕は電話をとったことをとても後悔したのです。
「もしもし……」
『よかった、出てくれて。心配したよ。』
心臓を直接鷲掴みにされたような感覚。冷や汗と恐怖に、僕は金縛り状態になりました。
『今日学校に来なかったんだな。どうしたんだ?皆残念そうにしていたぞ。』
一見、心配しているように思える発言。しかし僕は知っていました。
その言葉の冷たさと、隠された怒りを。
──何故……彼、が……
何も言葉を発しない僕など気にしていないように、話し続ける彼。その話を聞いているうちに、先程の考えが甘かったことを嫌でも理解しました。
『今日はお前のクラスの奴らが楽しそうだったな。』
『まあおそらく、お前がいないからだと思うが。』
『惟葉も比較的落ち着いて過ごせていたし、これからもずっと来ない方がいいかもな。』
『まあ、俺たちにとっては来てくれた方が有難いんだけど。』
『正直、今でもお前を殴りたくてしょうがないよ。』
ああ、違いました。
心配しているように思えるなんて。
ただ単に、他人行儀に戻っただけだったのに。
フラッシュバックする思い出。駆け抜けたあの日々。その全てが今、粉々になっていくような気がしました。
「…ど…して…
赤司君………」
『あまり呼ばないでくれないか。虫酸が走るんだ。』
その声に、またビクッとする僕。
『……っと、そうそう、今日は話があるんだった。俺たちキセキは、お前に復讐することになった。敦はおそらくお前の味方だろうが、大衆の前では歯も立たないだろう。』
──そんな……
『俺たちは皆怒りでどうにかなりそうだよ。特に真太郎がね。だから、その原因を根本から排除させてもらう。バレることなんてないよ?世間なんて、出すもの出せば静まるからね。
じゃあそろそろ失礼しようか。これ以上電話すると携帯を壊してしまいそうだ。
じゃあね。』
ブツッ。
ツーツーと無機質な音を出し続ける携帯を持つ手の感覚などもうありませんでした。
僕に残ったのは、たった一つの絶望。
そこに織り混ぜられた恐怖。
光が見えた学校も、これからの未来も、
僕にはもうなくなってしまいました。
──……なんで……
ポロ、と涙が一粒落ち、それが始まりで次から次へと溢れだしました。
気力など、もう残っていません。
叫びたくても、喚こうとしても、僕はもう疲れてしまった。
そう、僕はもう疲れてしまった。
それくらい、ボロボロだった。
「…聞いてますか…?クロさん……」
──聞いてるなら…応えてくださいよ……
なんて。
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