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変化2
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「……ん……ちゃ………
テッちゃん!」
ハッと目を開けると、高尾君と紫原君がいました。どうやら僕はバスケットコートで寝てしまっていたようです。
「というか、高尾君たち、学校は……」
「今日は土曜日だよ〜」
「あ、……。
僕は、寝てたんですか…」
「心配したんだよ!?テッちゃん見つけた時なんて、死んでるかと思った!」
「高ちんホント大袈裟だよね〜。さっきなんて…」
「ちょっ、紫原!言わなくていいから!だまって!?」
「え〜」
いつものように仲のいい二人に「帰りましょう」と言って立ち上がりました。
「歩けるようになったんだ!」とややお母さんのように喜ぶ高尾君と、普通に「よかったね〜」と言う紫原君。
三人で並んで病院に向かいながら、心底幸せだと思いました。
医師の方にも「もう大丈夫だろう」と言われ、明日からまた学校へ行けるようになりました。今日で退院できるとも言われました。
「テッちゃん、本当に大丈夫……?」
「学校のことですか?」
「うん…」
確かに、今回のことの大まかな原因は学校ですし、高尾君が心配するのもわかります。
でも、僕は強くなった。邪魔なものは自分で排除できるくらいに。
「…大丈夫です。ちゃんと向き合うって、決めましたから。」
その上で駄目だったら、壊してしまえばいい。
僕がそんなことを考えているとは知らない高尾君は、「そっか」と安心したように笑いました。
チク、と胸に針が刺さるような感覚を味わいながら、それでも僕は笑います。
全ては、すべてのために。
「あ、そうでした。話したいことがあったんです。」
僕は昨日の赤司君のことを二人にざっと話しました。紫原君のことを考えて、内容はややオブラートに包んで。
それでも、その事実が与える衝撃は強いらしく、しばらく紫原君は動きませんでした。高尾君はさらに心配して「やっぱ学校休もう!」と涙目で叫んでいます。
でも。
「逃げたら意味が無いんです。」
そんなことしたら守れない。
「向き合わなければならないんです。」
自分の弱さと。それを壊すために。
この言葉が違う意味に聞こえたとてしてもいい。
二人が笑えるなら、構わない。
「…黒ちん、強くなったね……」
紫原君が、どこか遠くを見るように僕を見ました。
──僕は、……僕は、そう思えませんけどね。
どう返せばいいのか分からず、僕は曖昧に笑ってみせました。
三人で談笑しながらゆるゆると荷物をまとめ、もう大体まとめられたというところで、あの話が持ち上がりました。
「そういえば、クロさんは音沙汰なし?」
ピタッと、思わず動きが止まりました。しかしそれは一瞬のことで、僕はすぐに何でもないフリをしました。
──言わない方がいい。気づかせない方がいい。
「…はい。音沙汰がないというか、まるで消えてしまったみたいな……」
本当に何も知らないようにそう言えば、二人はそれ以上聞いてきませんでした。
「…さて、荷物もまとめ終わりましたし、暗くなる前に帰りましょうか。」
「そ〜だね〜。」
担当の医師の方に挨拶し、お世話になった看護師の方にもお礼を言って、僕たちは病院をあとにしました。
明日から、学校。
とりあえず、頑張らなければ。
紅く染まる空を見上げながら、そんなことを思いました。
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