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作戦2
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「……え?」
──殴る?僕が?
無意識に握り締めた手の中に、じわりと汗が滲みました。
「一人でも何人でもいいから殴ってさぁ、俺はこんなに強いんだぞ〜って見せつければいいんじゃね?」
「それは、ちょっと……」
むき出しの暴力に少し驚きながらも、僕は分かっていました。僕はただ恐がっているだけなのだと。
確かに今の僕なら誰かを殴るくらいの力はあるでしょう。でも、きっと行動は起こせない。
心の底に、殴られた時の恐怖があるから。
もし殴れなかったら?やりかえされて、もし勝てなかったら?またやられる?殴られる?
──やだ。恐い。
しかしそれは一瞬のことで、まるでなんでもなかったように僕は振る舞いました。
「でもやっぱり、暴力はちょっと……」
紫原君はしばらく僕を見たあと、空を見ました。空よりずっと先にある何かを見つめながら、ポツリと僕の核心を突きました。
「恐い?」
「っ…」
「まぁわからなくもないけど。今まで散々殴られてきたんだし、恐いのは当然だと思うよ〜?」
紫原君は僕を責めているわけじゃない。逃げ道を与えてくれているだけ。なのに、どうしても責められている気がしました。
だってその逃げ道は、僕が使おうとした道だから。
──逃げちゃ駄目だ……戦うんだ…戦え、戦え、戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え………
「……やっぱり、僕には……」
僕はこの日、自分の弱さを知った。
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