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愛故に
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「敦。僕に逆らうな。正しいのは僕の方だ。」
僕と僕を助けようとする紫原君の間に入り、冷たい一言を放つ赤司君。
──ああ、もう駄目ですね。赤司君に言われたら、紫原君は……
予想通り、伸ばしていた手を下げ俯く紫原君。
それを見た赤司君は、不敵に笑います。
「そう。それでいいんだ、敦。……おい、早く車に乗せろ。」
こちらを振り向き、殺意をこめた目で僕を見ながら僕の周りの人に命令する赤司君。
高尾君も抑えられている。
紫原君も止められた。
力は、怪我のしすぎで使えない。
…もう僕に勝ち目はありませんね。
──でも、これだけは伝えなければ。
「紫原君。高尾君。」
ゆっくりと顔をあげる紫原君。その顔は悔しさに満ち溢れていて、まるで「ごめん」と言っているようで。
「そんな顔しないでください。僕はいいんです。僕は……幸せですよ。」
「「……え?」」
驚いた顔で僕を見つめる紫原君と高尾君。あはは、息がぴったりですね。
赤司君の事だ。おそらくただでは帰って来れないでしょう。だから、今のうちに。
「例え周りが信じてくれなくても、君たちは信じてくれました。それだけでも、十分に幸せです。…高尾君、紫原君。ありがとうございます。僕は、君たちを許します。」
悔いはないないといえば嘘になる。
──黄瀬、君……
でも。いや、だから、せめて。
この人たちには悔いを残したくない。
ありったけの感謝を。
君たちに。
「……高尾君、紫原君。君たちに、出会えてよかった。」
車に乗せられながら、やっと言えた一言。笑いながら、言えているだろうか。
「……っ!!!テっちゃん!!テっちゃん!!!!」
ああ、高尾君。顔は見えないけど分かりますよ。泣かないでください。
ちらりと振り返ると、やはり高尾君は泣いていて。紫原君はじっとこちらを見つめていました。
──……あれ?
一瞬、僕を見つめる紫原君の目が、何かを決意したような、そんな目のような気がして少し気になりました。
その瞬間。
僕は唐突に自由になりました。
目の前には、僕を抑えることなど忘れて震える人たち。
混乱する頭で、やっと理解出来たコト。
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