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愛故に3
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赤司君を跳び越え、僕の前に立つ紫原君。そして僕を優しく抱き上げ、赤司君を見ます。
「あ、敦?どうして……」
赤司君を見る紫原君の目は、とても悲しそうで、辛そうで。
「ごめん、赤ちん。俺は今まで、ずっと赤ちんの言う通りにして来たよ。俺もそれは正しいと思ってたと思う。……でも、今回は赤ちんが間違ってると思う。」
そう言うと紫原君は赤司君から十分に離れた場所に移動し、そこに僕を下ろしました。そして、高尾君を抑えていた人たちを一瞥します。冷たいような、容赦のない目で。
「……っ!」
それだけで、その人たちは高尾君を放しました。自由になった高尾君は、すぐさま僕に駆け寄って来てくれました。
「僕が……間違ってる…?」
ふらふらと立ち上がった赤司君が、紫原君に殴られた頬を抑えながら呟きます。
「僕が間違っているわけがない。僕はいつも正しい。今回もだ。」
「赤ちん…」
「お前は騙されてるんだ。そこにいる黒子に。高尾和成といったな?お前もだ。そいつはお前らが思っているような奴じゃない。」
その言葉に勢いよく高尾君が立ち上がり、赤司君を睨みます。
「てめぇ赤司!何もわかってないくせに、テっちゃんを悪く言うな!ふざけんじゃねぇ!」
叫ぶ高尾君を尚も睨む赤司君。ちらりと紫原君を見ると、今にも泣きそうな、そんな顔をしていました。
「赤ちん。俺、赤ちんのこと好きだよ。赤ちんのためなら、なんだってできるよ。でも、赤ちんが間違ってると知ってるのに見て見ないフリはできない。赤ちんを好きだからこそ、できないんだ。」
「だったら僕の言うことを……」
「だから、例え赤ちんにとって俺が敵になっちゃっても、俺は黒ちんの味方になるよ。でも、それでも、俺が赤ちんを好きなのには変わりないから。」
それだけ言うと、紫原君はゆっくりと赤司君から離れ、背を向けました。
「敦!待て!敦!!
……………敦…」
後ろからいくら赤司君が叫んでも、二度と紫原君は振り返りませんでした。手を握りしめ、頑なに前へと進み続けました。
「紫原君……」
覗き込んで彼の顔を見て、思わず僕は目を見張りました。
紫原君は静かに涙を流していました。まるで、何かに耐えるように。
──あぁ、愛してるからだ。
愛しているからこそ、間違った道を進んで欲しくない。
たとえ自分が敵になっても、真っ直ぐに進んで欲しい。
その気持ちは、痛いほど僕にも伝わり、気づくと僕も泣いていました。
愛、故に。
愛しているのに、離れなければならない。
愛しているからこそ、離れなければならない。
まだ中学生の僕達には、
それはあまりにも辛すぎた。
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