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悪意2
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学校へ向かう途中、何度かクラスメートとすれ違ったが、誰一人として俺に気づいた人はいなかった。むしろ、黄色い声をあげられた。
そのまま気づかれることもなく学校へたどり着き、門を覗いた。門に向かって歩いている生徒はいるが、惟葉さんはいない。
「人呼んどいてこの対応とか、モテねぇだろ、普通。」
仕方なく、門の横にある電柱に寄りかかって待つことにした。
すると、数十分たった頃に、やっと惟葉さんが出てきた。
「やっと来た……って、うわ〜……」
キセキと用心棒(?)に囲まれながら。
──なんか、アレだな。羨ましいとかより、防御力高そうだな…。
左には、無表情ながらも周りに気を配り優しげに話しかけている緑間君。
右には、超ダルそうで面倒くさいって顔をしながらもちゃんと隣を歩いている青峰君。
その他、バスケ部の一軍の人二、三人が後ろに。
そんな心強い人たちに囲まれ嬉しそうそうに笑う惟葉さん。
赤司君は先ほど俺を追いかけてきて紫原君に殴られていたからいない。
黄瀬君は確か今日は仕事の日だからいない。
「……随分といい身分だな、悲劇のヒロイン気取りさんは。」
柄にもなく嫌味が口をついて出た。
本当に、羨ましいとかいうものはなかった。あるのは、純粋な疑問。
なんで。
なんで。
彼女の周りはあんなにも楽しそうなのだろう。彼女は嘘つきだよ。そんな資格ない。
黒い黒い感情を抱きながら、彼らのあとを距離をとりながらついていった。
しばらく歩いていると、惟葉さんがやけに楽しそうに何かを話し出した。
気になったので、ボイスレコーダーを起動させてそっと距離を縮める。
「緑間君と青峰君、私のこと名字で呼ぶよねぇ。」
「当たり前なのだよ。俺は礼儀を重んじるからな。」
「女を名前呼びとか、さつきぐらいだな。」
緑間君は当然の如く、青峰君はどうでもよさそうに。二人ともさして興味はなさそうだけど、次の惟葉さんの一言でその空気は崩れた。
「えー。じゃあ私のことは名前で呼んでくれないのぉ?私は呼んでほしいんだけどなぁ。」
──上目遣いウゼー。
俺はそう思ったが、二人はそうでもないらしい。
「な、なな何を言っているのだよ。いや、呼んでほしいなら構わないが、いやしかし……」
「………ま、一応考えとくわ。」
緑間君と青峰君の反応に気を良くした惟葉さんは、次の曲り道で一人曲がっていった。緑間君と青峰君、バスケ部一軍たちはバラバラに帰っていく。
「……行くか。」
慎重に、だけど迅速に、俺は惟葉さんのあとをついていった。
惟葉さんは携帯を取り出しながら、誰かと話している。その内容は決していいものではなかった。
「キセキの世代の人って本当に騙されやすいよぉ。……うんうん、今までで一番簡単だったぁ。あの黒子君、かわいそーにねぇ、あはははは。……あ、そぉそぉ。黒子君をレイプした人たち、最近どぉ?溜まってるならもう一回襲わせたいんだけどぉ……ん、おっけー。」
じゃーねぇ、と言って惟葉さんが携帯を切ったのを見て、すかさず惟葉に近づく。
「今の、どういうことだよ。」
声を出すまで人がいると気づかなかったのか、ビクッと肩を震わせてから惟葉さんは後ろを向いた。フードと口調のせいで、まだ俺が誰だかは分からないようだ。
「だ、誰よ!」
「んなことどうでもいい。それより今の話の説明をしろ。」
キッと睨みつけると、目があった。暗くてもかろうじて見える水色の目が見えたのか、彼女はハッとしたあとにゆっくりと笑った。
「どうしたのぉ?こんなところで。もしかして、謝りに来たとかぁ?」
あくまでもいつもどおりに振る舞う惟葉さん。それでも、俺がずっと睨み続けると気まずくなったのか、本性を出した。
「随分変わっちゃたんだねぇ。あは、そうだよ?全部ホントのことだよ?キセキの世代が騙されやすいって話も、今までで一番簡単だったって話もぉ、君がかわいそぉって話も。ねぇ?黒子君?」
「俺を襲った奴らも……」
「うん。私がお願いしたのぉ。どう?みんなに裏切られて捨てられてレイプまでされた気分は。」
我慢の限界だった。
「聞きたい?
………最っ悪だよ。」
ボイスレコーダーを切って、素早く惟葉さんに近づく。そして殴ろうとした瞬間、ギリギリで理性が勝って〝僕〟は惟葉さんの顔の真横、コンクリートに拳をぶつけた。
ダメだ。
卑怯だ。クロさんのまま殴るのは。
クロさんの手を借りるのはここまでだ。
あとは、自分でやらなければ。
惟葉さんを見ると、恐怖で目を見開きながらまたもや誰かに電話をしている。手が震えていてうまく使えないのか、時間がかかっている。
「……ぁ、もしもし!?今すぐ来て!!GPSオンになってるから!」
それだけ言って電話を切ると、彼女は一目散に逃げ出した。もちろん、僕と反対方向に。でも、僕は慌てない。むしろ、好都合だ。
ゆっくり追いかけたり、急にスピードを速めたりして、惟葉さんを走らせた。恐怖と焦りで、彼女はどんどんと奥へと走っていく。
まさに、僕の考え通りに。
そして、行き止まりにたどり着いた。
「このあたりの地域は全て地図でよく確認済みですよ。特にこの路地はなにかに使えると思っていたので。ここ、かなり奥なんで叫んでも効果ないんですよ?」
恐怖と疲れで彼女の足は生まれたての子鹿のように震えている。そのうち耐えきれなくなって、へなへなと座り込んでしまった。
これが、僕をここまで追い込んだ元凶だと思うと、笑いと怒りが込み上げてくる。手加減しようにも、できそうにない。
さあ、悪意ある拷問を始めよう。
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