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黄瀬side
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泣き崩れる黒子っちに近づいて、そっと抱きしめる。腕の中で黒子っちがビクッと震えて、逃れようと暴れた。でも、その抵抗が本気じゃないことぐらい分かるから、それ以上の力で抱き続ける。
「やっ……離してください黄瀬君…!」
「なんでっスか。」
「僕が……僕が、汚いからです……」
「意味分かんないっス。」
喋りながら、抱きしめる力をさらに強める。黒子っちの匂いと、黒子っちの声。ただそれだけなのに、涙が出てきた。
「黒子っち、黒子っち、黒子っち…!」
会いたかったんだ。
でも恐くて。
それでも会いたかったんだ。
君が、心底好きなんだ。
言いたいことは沢山あるのに、どれも言葉にできなくてひたすらに名前を呼び続けた。最初は抵抗していた黒子っちも、だんだんと抵抗をやめ、ついには背中に手を回して嗚咽をもらした。
「き、せく……うぅ…ぁ……黄瀬君……」
「……!!黒子、っちぃ………」
確信した。
やっぱり黒子っちは俺たちを裏切ってない。
告白もしていない。切りつけたなんてありえない。
間違ったのは俺たちの方だ。
「黒子っち、ごめん…ごめん……黒子っち……」
謝って済むようなことじゃないのはわかってる。
それでも、謝らずにはいられなかった。
俺が、一番信じていなければならなかったのに。
自分が許せなくて、目の前のこの人が愛おしくて。
こんなにも涙が止まらないのは、初めてだった。
しばらくの間抱きしめ合いながら泣いていたら、「なんなのよぉ……」と声がした。
「あ……」
そうだ。俺、惟葉っちに呼ばれてきたんだっけ……?
今まで忘れていた惟葉っち……惟葉ちゃんのことを思い出して、顔をあげた。
服もボロボロ、髪もボサボサ、メイクは涙でグチョグチョ。でも、傷はない。
黒子っちを嵌めたのは許せないけど、そうまでしてしたかった何かと今の状態を見ていたらなんだか同情心が湧いてきてしまう。
(まぁ、許さないモンは許さないっスけど。)
「き、黄瀬君…私、黒子君に襲われてぇ……」
彼女が何を言おうが、もう俺は騙されない。
「襲われた?その割には傷一つないっスよね。逆に傷ついてるのは黒子っちの方だし。」
惟葉ちゃんの反対側を振り向くと、四人のチンピラが倒れている。その中の一人が持っているナイフには、血がついている。そして、黒子っちの頬にも……
頬についた傷をそっと触って、血を拭った。
「そこで倒れている人たちは、誰なんスか?」
「えっ?そ、それはぁ……」
「惟葉ちゃんが怪我してなくて黒子っちが怪我してるところを見ると、この人たちは黒子っちとやり合ったんスよね?そしたら、この状況は黒子っちが惟葉ちゃんをこの人たちから守ったか……惟葉ちゃん、アンタが黒子っちを襲わせたかっスよ。」
ビクッと惟葉ちゃんの肩が揺れた。同時に、黒子っちの手が震えているのにも気づいた。
背中に回された手をそっと握り、黒子っちに笑いかける。大丈夫。もうどこにも行かないから。
「き、黄瀬君は、黒子君を信じるのぉ?私、黒子君に襲われたんだよぉ?」
「それはもう聞いたっスよ。あんたの口から何回も。でも、まだ黒子っちからは聞いてない。」
ぴったりとくっついていた黒子っちからゆっくりと離れて、黒子っちの目を見た。引き離されて少し怯えた黒子っちも、俺の目を見てるうちに落ち着いていった。
「黒子っち。黒子っちは惟葉ちゃんに告白して、傷つけたんスか?今も、本当に惟葉ちゃんを襲ったんスか?……俺は、どんな答えでも黒子っちを信じるっスよ。」
黒子っちは答えないまま、しばらく俺の目を見続けていた。見つめあって、とめどなく流れ続ける涙を拭うと、黒子っちははっきりとした声で答えを出した。
「僕は…僕は、やってません。」
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