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解決
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惟葉さんの話が終わっても、僕は何も言えませんでした。
黄瀬君も、驚きを隠せないといった顔で呆然としています。
惟葉さんはというと、少しスッキリとしながらも悲しそうな顔で笑っていました。
確かに、誰かを騙したり嵌めたりすることは絶対にいけないことだと思います。例え今までに何があったとしても、それを言い訳にして誰かを悲しませることは、許されることではありません。
でも。
惟葉さんを〝こう〟してしまった理由はちゃんとあった。
それはとても嬉しかったです。
何故なら、彼女はまだやり直せるから。
「話は終わったんだから、帰っていいかしら?」
すっと立ち上がり埃をはらいながら、惟葉さんが言います。
すると、黄瀬君がふっと立ち上がって惟葉さんに近づき、着ていたパーカーをそっと惟葉さんに羽織らせました。
「制服もボロボロになってるっスから、これ着てくださいっス。」
「……ありがと。」
素直にパーカーを着る惟葉は、本当に以前と違います。そしてもう、自己放棄でもない。
正真正銘、ただの惟葉さん。
「…惟葉さん。」
「何?」
「ちゃんと皆さんに言いましょう。」
彼女の目を見ながらはっきりとそう言うと、惟葉さんは驚きと戸惑いで固まりました。
しかし、その後すぐに落ち着き、静かな声で「そうね。」と言いました。
「今度の全校集会で、私が言うわ。謝らなきゃいけないし。」
本気の目をした惟葉さんは、「じゃあね。」と口にしてすぐにその場を去りました。残された僕と黄瀬君は、目を合わせながら笑いました。
「よかったっスね。これで全部いい方向に行くっスよ。惟葉ちゃんも、自分に素直になれたみたいだし。」
「そうですね。僕らは誤解し合っていただけのようです。…これも、もういりませんね。」
ポケットから取り出したボイスレコーダーを二つに折って、近くのゴミ箱に捨てます。僕の力にビックリしながらも、「黒子っち強っ。」と笑ってくれる黄瀬君。
……うん。
やはり僕は幸せ者のようです。
暗い路地裏の奥の奥で誰にも見つからないキスを交わしながら、ふとそう思いました。
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