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あの後、黄瀬君は「充電満タンっス」と仕事を休んだのを取り消し、後ほど仕事に向かうことになりました。
そのため少し時間が空いたのですが、何もすることがなかったので、マジバに寄ってバニラシェイクを買ってから帰ろうと思いました。
そこでふと、手元にバスケットボールがないことに気づきました。ついでに、シャーペンも。
──……あ、あー。学校の門のところに置きっぱなしだった……シャーペンは路地裏だし、面倒くさいのでバスケットボールだけ取りに行きますか。
黄瀬君と相談してバニラシェイクを飲みながら方向転換して学校へ。流石にもう帰宅中の生徒の姿は見えず、夕日も沈む頃でした。
学校に着けば、やはりバスケットボールはありました。幸い、誰にも触られず、綺麗なままで。
片手にバスケットボール、もう片手にバニラシェイク。かなり幸せな気持ちで僕は帰途に着きました。
黄瀬君が少しトイレに行くというので公園で待とうと入口から入ろうとした時、突然後ろからものすごい力で引っ張られました。
しかし、僕の手にはバニラシェイク。落とすわけにはいきません。
前に動かそうとしていた足を瞬時に後ろに動かし、なんとか体制を整えます。すると、僕を引っ張った人物は右に移動し、胸ぐらを掴まれました。勢い良く持ち上げられ、両足が地面を離れました。
そこでやっと見えた顔。
学校の人だとは思いましたが、まさかの人物に驚きます。
もはや運命としか言いようのないこの出会いは、一番嫌なタイミングで起こったのです。
「貴様っ……!惟葉に何をしたのだよ!!」
「…っ…緑間、君!?」
そう、目の前には緑間君。おそらく初めて見ただろうマジギレの顔、浮き出た青筋、額を流れる汗。驚き過ぎて、逆に関心を持ちました。
「ふざけるなよ!?これ以上惟葉に何をするつもりだ!いい加減にしろ!」
「ちょ、ちょっと待ってください。これ以上って言われても、僕は最初から何も……」
──あー…最初は何もしてませんてしたが、先ほどちょっとしてしまいましたね。しかし、すでに誤解は解けたのでは……?
「戯言を言うな!最初に惟葉を傷つけたのはお前だろう!!さっきだって……さっきだって、あれほど何があっても笑っていた惟葉が、泣いていたんだぞ!?」
その言葉に、思わず僕は耳を疑いました。
泣いていた?
惟葉さんが?
……やはり、我慢していたのでしょうか…
先ほどの冷静な態度は作り物。あの緑間君への気持ちが本当なら、本当は悲しくて仕方がなかったはず。
それを思って僕が何も言えずにいると、緑間君の後ろから惟葉さんが走ってくるのが見えました。その必死の表情に、僕は大体の経緯を理解しました。
──つまり、僕たちと別れた後、惟葉さんは泣いていて、そこに偶然緑間君が通りかかったと言う感じでしょうか。惟葉さんが泣いていることに驚いた緑間君は、惟葉さんの話を聞かずに僕を探していたと。
なにこのタイミングの良さ。出来すぎでしょう。
げほっ、と苦しくて咳をもらすと、生理的な涙がぽたりと零れました。いつもは温厚な僕ですが、こういうピンチでは話が違います。
宙に浮いた足を勢い良く振りかぶり、緑間君の腹に一撃の蹴りを入れる。あまりの苦しさに手加減ができず、あ、と思った時には緑間君がそこに崩れ落ちていました。
そこに、惟葉さんが追いつく。
少し赤い目で緑間君に駆け寄る惟葉さんと、お腹を抑えて蹲る緑間君。そして、首をさすりながら小さく咳をする僕。
──もう、誰が加害者で誰が被害者なのかわかりませんよ。いや、今のは僕が悪いんですけど。
てか、あの、この状態……僕はどうすればいいのでしょう……
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