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解説side
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しばらくのあいだ、二人は無言のままだった。
言いたいことがあるのに切り出せない緑間と、黒子が言い残していった少々嘘入りの発言を必死に理解している惟葉。
雨は止むことを知らず、まるで永遠のように振り続ける。
「お腹……大丈夫?」
口を開いたのは惟葉だった。
「腹…?」
「さっき黒子君に蹴られてたとこ。」
そこまで言われ、緑間はやっとそれを思い出した。
先程、黒子の胸ぐらを掴んでいた際、緑間は黒子に強烈なキックをくらっていた。
思い出すと、途端に痛み出す腹。しかし、正直に痛いと言うのは気が引けた。
「大丈夫なのだよ。」
「そう……?」
「ああ。」
そして、また無言。
((気まずい。
非常に気まずい。))
二人とも、そう思っていた。
しかし、聞かなければ先に進めない。緑間は、気まずさよりも話を続けることを優先した。
「惟葉、黒子の言っていたことはどういうことなのだよ。詳しく、話してくれないか?」
(きた。きてしまった。)
惟葉はそう思った。
少しでも嘘を言うのには、いまさらだが抵抗がある。
しかし、その嘘に頼らなくてもいいほど、強くもなかった。
「全部本当のことだよ。私、ずっと自分を隠してたの。厚いメイクと、明るそうな性格と、チャラそうな口調で。」
(できるだけ、真実を伝えたい。特に、この人には。)
惟葉のその思いは、惟葉の目から涙を零した。
その涙に驚いたのは、緑間だった。
(なっ……!?また、涙……!?)
緑間はとてつもなく動揺した。なぜなら、先程といい、今回といい、どう対処すれはいいのかがさっぱりわからないからだ。
涙なら、バスケで沢山見た。自分達ではないが、自分達に負けていった奴らが沢山流していた。
しかし、惟葉のこの涙はそれと違う。
なぜ泣いているのかも分からない。
どんな対処が最善なのか、そもそもどう対処したらいいのかすら分からない。
つまり、何もできない。
(なんて歯がゆいのだよ……!!)
しかし、惟葉はそこらの女子とは強さが違った。
「ごめんなさい。」
はっきりとそう言う惟葉の目には、涙と共に強い意志があった。
「私、緑間君を、みんなを騙していたの。黒子君は、何も悪くないの。……私が、弱かったの。」
心が、弱かった。
頼れる人も、安心できる時もなかったから。
自分を恨んで、自分だけを信じて。
そうしているうちに、騙すことに何も思わなくなっていった。
惟葉は、ただの女子だった。
普通の、どこにでもいる女子だったのだ。
変えてしまったのは、周りの人々。
事情など何も知らない緑間も、なんとなくそれを察した。
「……わかっているのなら、」
その言葉はするりと出た。
「分かっているのなら、あとは変えるだけなのだよ。分かるのは難しいことだが、分かってしまえば……
変えるのなど、簡単だろう?」
言い終わると、まるで照れ隠しのように、緑間は目を逸らしながらメガネをかけ直した。
謝っても、心を入れ替えても、許されるわけではないだろう。
しかし、何も変わらないわけにはいかないのだ。
惟葉は、少しの間ぼーっと緑間を見つめた後、声を上げて泣いた。
緑間は驚きはしたものの、今回は動揺しなかった。
惟葉が泣く理由が分かったからだ。
きっと惟葉は、放たれたのだ。
心の奥に絡みついた、過去の記憶から。
緑間は、目を逸らしながら惟葉の肩を抱き寄せた。
惟葉は、緑間の胸にしがみついた。
もう、言葉はいらなかった。
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