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金曜日2
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下に降りると、昨日の運転手の人が「こちらです。」と案内をしてくれました。案内された先には、長方形のテーブルがあり、既に高尾君と花宮さんが座っていました。
僕たちも適当な席に座ると、花宮さんが一際明るい笑顔と声で、
「それじゃあ頂こうか。」
と言いました。
紫原君は未だに顔を変形させていますが、僕と高尾君はだいぶ耐性がつき、特に何の問題もなく「いただきます。」と手を合わせました。
その後もなんとなく会話をしながらも朝食を食べ終わり、鞄を持って家を出ました。
「それではいってきます。」
「ああ、ちょっと待って。」
当然の如く歩いて登校するつもりでしたが、花宮さんの計らいにより車で登校することになりました。
「本日から四日間、お二方を送迎させていただきます、伊東です。」
そう言ったのは、昨日の人とは違う若い男性の人。
黒い髪をオールバックで固め、黒のスーツをピシッと着るその人は、運転手というよりボディーガードのようでした。
「その人は運転手兼ボディーガードみたいなものだから。」
「尽力させていただきます。」
「は、はぁ。よろしくお願いします…?」
というわけで、僕たちは朝からリムジンに乗ることになりました。
車に乗り、昨日と同じく全く揺れもない運転にこの人もプロなのだなと感心しながら、僕は紫原君に分けてもらったお菓子を食べました。
「…黒ちん〜。」
「はい。」
「このリムジンさぁ、校門の前で止まりそ〜だよね。」
丁度心配していたことを言われ、やっぱりそうなのかとため息をつきます。
元々紫原君がいるので僕のミスディレクションは通用しませんが、こんな車を校門の前に止められてそこから出てきたりしたらそれはもう悲惨なことになりそうです。
二人でため息をついていると、丁度車が止まったのが分かりました。
ドアが開けられ、伊東さんが顔を覗かせながら「到着いたしました。」と告げます。
「来たね…」
「ですね…」
覚悟を決めて鞄を持ち、慎重に車から降りました。すると、そこは。
「う、裏門……!」
誰もいない裏門。教師や許された人しか入れない裏門。
予想していなかった出来事に、僕も紫原君も唖然としました。
「許可は承諾済みですのでご安心ください。」
──伊東さん、貴方という人は……!!
バッと振り返り、伊東さんの右手を両手で握ります。予想していなかったのか、今までずっと無表情だった伊東さんが驚いた顔を見せました。
「僕は貴方を甘く見ていました。貴方は素晴らしい人だ。」
僕がそう言うと、紫原君も伊東さんの左手を両手で握りました。
「伊東さん?だよね。ちょっとマジで神に見える。」
ブンブンと手を振り続けていると、驚いた顔をしていた伊東さんが急に笑い出しました。
「ハハハッ……いえ、申し訳ございません。こんなにも感謝されるとは思っていなかったので。」
少し笑いを引きずりながらそう言い、伊東さんは胸ポケットからボールペンを取り出しました。
「これをお持ち下さい。ボールペン型のリモコンです。このノックの部分を押していただくと、私の方に連絡が来ると同時に盗聴が始まります。」
「スグレモノですね……」
ペンを受け取り内ポケットにしまいます。
「連絡を頂いた五分後には必ず駆けつけますので。」
──イ、イケメン……!
「ありがとうございます。いってきます。」
「行ってらっしゃいませ。」
後ろから伊東さんの視線を感じながら、僕たちは玄関に足を踏み入れました。
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