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火曜日
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今日はアラームが鳴る前に起き、随分と早めに全ての支度が終わりました。
そわそわ、そわそわ。
携帯を開いては閉じ、バッグの中の持ち物を確認してはため息をつき、またそれを繰り返します。
「落ち着きませんね……」
そう、何と言っても今日は火曜日。
火曜日です。
火曜日。
「ハァ……」
現在の時刻は六時四十分。
高尾君や紫原君を起こすにも早すぎますし、下に降りるにも早すぎます。
かといって今から寝るのも論外です。
学校の支度はそもそも昨日のうちに終わっていますし、制服にも着替え終わりました。
寝癖もバッチリ直しました。
つまり。
──することがありません……
要するに暇です。
自分自身、何故こんなに緊張しているのか不明です。
──いえ、不明ではありませんですけど。分かってますけど。
「ハァ……」
このままでは高尾君を起こしてしまいそうのなので、音を立てないように部屋を出て下に向かいました。
流石に花宮さんも今吉さんもおらず、使用人の方が朝食の準備などで動いているだけでした。
と、その中に見知った顔を見つけ、その人の方へ歩きます。
「あ、お早うございます。黒子様。」
「伊東さん、おはようございます。」
相変わらずビシッとスーツを着る伊東さん。最初の頃からして随分と表情が柔らかくなった伊東さんは、そのイケメンオーラも増していました。
「お早いですね。もしや勝手に目が覚めてしまわれたとか?」
スパッと本音を当てられ、曖昧に返事をしながら目を逸らすと、クス、と笑われました。
「緊張なさっているのでしょう。少し外の風に当たってきてはどうですか?玄関を出てすぐに綺麗な庭園がございますよ。」
「そうなんですか?それなら行ってきます。」
伊東さんの言った通り、玄関の扉を出てすぐ右に美しい庭園がありました。
寸分の狂いもなく切り取られたブロック状や円状の木々。
きちんと間引きされた赤や青、紫など色とりどりの薔薇。
「綺麗ですね……綺麗ですけど……」
──これ、迷路じゃないですか……?
目の前に広がるのは、薔薇やカットされた木々飾られた……曲がりくねった道。
真の無駄遣いを見つけた気がしました。
しかし興味は湧き、時間もあるだろうと僕は迷路に足を踏み入れました。
結果。
「迷いました……。」
僕は決して背が低いわけではありません。
低いわけではありません。
このカットされた木が高すぎて、周りが見えないのです。
まあ、見えてしまったらそれはそれでつまらないのですが。
「それにしても、どうしましょうか……」
時間を見ると七時半。
──そろそろ流石にやばい時間です。
まだ朝食もとっていませんし、歯磨きもしなければなりません。
こうなったら誰かを呼ぶしかないと渋々声を出し始めました。
「すみませーん…誰かいませんかー?」
結果、遅すぎると迎えに来てくれた伊東さんに無事保護され、朝食の時に話のネタにされました。
さらに、どうやら伊東さんのツボにも入ったらしく、学校に向かう運転中にも何度か伊東さんの笑い声が聞こえました。
もう二度とあの迷路には入りません。
僕はそう固く決心しました。
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