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結果から言えば、事態は黒子の望んだ通りに進んだ。
黒子が救急車で運ばれた翌日、目を真っ赤に腫らしながらも宣言通り惟葉は全校集会にて真実を告白した。
騙されたという事実に憤る生徒も多かったが、それよりも黒子に謝りたいという生徒の方が圧倒的に多かった。
さらに、惟葉が自身の過去についても告白した。
同情ではあるが一部の人間はそれに涙し、謝れば済むことではないがこれから自分を変えていこうということになった。
つまり、結果的に惟葉は許される形となったのだ。
このことで真実を知った赤司は自分の罪に苛まれ、一度は乗っ取られた体を自らの力で取り戻した。
後日談だが、その後もう一つの人格が現れることはなかった。
黒子はというと、出血多量、骨折、打撲、内出血などでかなりの重体となり、その後数日の間集中治療室から出られることはなかった。
脳にもかなりのダメージを負っており、何らかの後遺症が残る可能性も出た。
やっと集中治療室から出られても目覚めることはなく、黒子のいない日々は一週間、二週間と過ぎていっていた。
その間、黄瀬や高尾は毎日のように見舞いに訪れ、返事のない黒子に向かって笑いかけながら日常の出来事を話し続けた。
紫原、花宮、今吉たちも毎日とまではいかないがかなりの頻度で見舞いに来ていた。
そんなある日。
「黒子っち、もうすぐ冬っスよ。」
黄瀬は今日も椅子に座りながら黒子の手を握り、答えが帰ってくることのない会話をしていた。
黒子の起きない間に季節は過ぎ、そろそろ本格的に寒い冬の季節へと突入しようとしていた。
「俺、クリスマスは絶対黒子っちとデートする!って思って、もう休みもとってあるんスよ?」
愛しい恋人の開かない瞼に向かって語り続ける黄瀬。
黒子が起きなくなってから、黄瀬は随分と痩せていた。
目の下にもクマができ、そのやつれ具合は仕事に影響するほどだった。
「実はプランも立ててあるんスよ。まだ秘密っスからクリスマスまで楽しみにしといてくださいっス。」
ガラ、と小さな音を立てて病室のドアが開いた。
入ってきたのは、これまた濃いくまを作った高尾だった。
「あ、高尾っち。」
「……よ。」
黄瀬と反対側のベッドの横に椅子を出して座り、黒子の顔を覗き込む高尾。
「……ホント、全っ然起きないな。」
「……っスね。」
黒子は傍から見ると本当に寝ているようで、いつ目を開けてもおかしくないような表情だった。
それでも、目は開かない。
ずっと今まで、そうだった。
「はぁ………」
ボス、とベッドに顔を伏せる黄瀬。
その肩は小さく震え、黒子の手を握る手にも力が入る。
「……お願いだから、起きてくださいっスよ…」
掠れ気味の小さな声。
その声に、高尾はつられるように声を押し殺して泣いた。
限界。
そんなものはとうに超えていた。
下を向き、涙を次々と落とす高尾。
ベッドに顔を伏せ、少しずつ布団を濡らしていく黄瀬。
だから、二人は気づかなかった。
黒子の瞼が、ぴくりと動いた後ゆっくり開いたのに。
「……せ君…た…お君…」
結果から言おう。
事態は黒子の望んだ通りに進んだ。
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