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「最近なんか元気ねぇな?」
授業が終わり休憩時間にふと隣の席の山田が声をかけてきた。
「…そうか?」
昨日は結局家に帰ってすぐに風呂を洗ってお湯をはりながらナカに出された棗の精子を掻きだしてた。
毎度になったあの作業は…慣れてきたけどやっぱり苦手で何より虚しい。
なんで男の俺が…ナカに出された男の精子を自分で突っ込んだ指で掻きださなきゃなんないんだ、と。
そう思う度よくわかんないけど…なんか大事なものが疲弊していく気がするんだ。
「古河のお迎えが来るようになってからだよな?」
“古河”って名前に迂闊にも反応してしまう。
「矢木、古河と付き合ってんの?」
「…ない。」
普通に聞かれて普通に答える。
この山田はこのクラスになってからずっと一緒にいて多分、棗の次くらいには親しく付き合っているヤツだ。
だもんだから…まあそれなりに色々と分かられているような気がする。
「古河ってお前のこと好きだよな。」
「は?」
「いつも“香月、香月”ってさ?幼馴染ってもあんだけ懐かれるとちょっと怖ぇよな。」
「…はは。」
カラカラと笑うヤツを見ながら苦笑いが出る。
懐くっていうか…性奴隷?
なんか最近はそんな残念な表現が一番合ってるような気がしてならない。
笑えない俺に気付いてか山田は少し真面目な顔をしながら俺の腕を取って立ち上がらせて。
「もうすぐ古河のお迎え来るな。ちょっと席外すか?」
そう言って俺を教室から連れ出した。
廊下を進んで突き当りの階段をひたすら上がっていき屋上に出るドアの前に着く。
数段ある階段の一番上に座った山田が立ったままの俺を見上げて腕を組みジッとみつめてきた。
「…なに。」
「相談くらいのるけど?」
「は?」
いきなりの振りに驚くけど…みつめてくるヤツの瞳が真剣だから俺は。
ヤツの隣に座って膝に肘を立てて組んだ手の甲に顎を乗せて…。
「なんかさ…ちょっと色々、思考的に消化不良な感じでさ…」
そんなさわりから先日からの棗との関係の話を始めた。
幼馴染の棗が俺に彼女ができてから裏でしてたこと。
なんの前触れもなく突然俺を抱いたこと。
それから続いてる愛のない行為…などなど。
そこまで話して…こんな話を普通のヤツにして引かれないかな?
そう思ったけど結局最後まで全部話し切ってしまって。
「悪いな…気持ち悪いだろ、こんな話…」
「いや別に。」
なんとなく後ろめたくて言った声にヤツは普通に答えてくれてから。
「矢木は古河が好きなのか?」
そう言って首を傾げた。
「好きか嫌いかってとこにも上がんないんだよな、実際。」
「なんで?」
「だってさ…ぶっちゃけて言えば相当昔から一緒にいるからある意味兄弟みたいなもんだし…」
「兄弟にならレイプされても平気ってこと?」
「それは違う。でもさなんかさ…棗ってあんな感じだから許せちゃうってのかな…よくわかんね。」
…自分でもわかんないんだ。
今までもこんな風に振り回されてきてたし自分勝手なヤツに勝手なこと押し付けられたりしてたからな。
ただ今回のことで一番思うのは。
「なんでアイツが男の俺にあんなことすんのかが理解できない。」
「好きだからじゃねぇの?」
「好きならなんで大事にしてくれないんだ?」
「そんな考えを持ち合わせてないんじゃね?」
「…人としてどうなのそれは。」
出したら出しっぱなしとか。
俺を放って自分だけ寝に入るとか。
なんか…そういうのって…。
「そこに愛情を感じないんだよ。だから…便利に使われてんじゃないかって思うんだよな。」
思うところはそれ、そこ。
身体はある意味…そうなることに同意してるっぽいけど感情がついていってない。
俺はそういうこと初めてだからわかんないけど…こんな扱いは本当に嫌だと思うから。
「だから…」
「じゃあ俺と付き合ってみる?」
煮詰まってる脳にやたらと軽いヤツの声が聞こえて…って?
「は?なに言って…」
「俺はちゃんと矢木を大事にするよ?」
「え…だからなに言ってんのって…」
「だから、別にセックスしなくてもいいから俺と付き合ってみないか?」
つらつらと続けるヤツをガン見。
するとヤツは俺を真っ直ぐに見てから。
「香月。付き合ってくれ。」
そう言って俺の手を取った。
◇◆◇◆◇◆◇
山田からの突然の告白に驚く間もなくHR開始のチャイムが鳴った。
そしてそれが終わるとほぼ同時に。
ガラリ。
いつものように教室の後ろのドアが開いて。
「香月!」
…と、棗の声がした。
あまりにいつも過ぎて周りはもうこれといった反応を示さない。
だけど俺は…そんなヤツを振り返ることが出来なくて。
「…さあ、どうする?」
山田の声に身体がビクつく。
どう…って言われても…。
さっきされたばっかのヤツからの寝耳に水の告白。
果たしてあれは本音なのか同情でなのかわからなくて…。
「香月!」
極側で聞こえた棗の声に驚いて身が竦んだ。
「帰るぞ香月。時間が惜しい。」
グイ、と腕が引かれて思わずその手を払った。
「…香月…?」
「時間って…なんのだよ。」
一歩後ずさって窓際の壁に背を付ける。
あれ…なんで俺こんな…?
目の前にいる棗の表情は驚きを通り越してしまってるようなそんな感じで、その後ろにいる山田もまた同じ風。
さっき散々山田に吐露してしまったからなんか変な勢いがついたのか?
言うつもりもないのに俺の口は止まることなくヤツに向かって動き始めた。
「棗がいう時間ってセックスするだけのことだろ!別に俺じゃなくてもいいんじゃないの?」
「は?なに言ってんだよ香月…」
「毎日毎日ヤッてさ…なのにお前は一度だって俺のこと考えてくれたことあんの?」
「なに言って…」
「男の俺が男に出された精子、自分で掻きだす虚しさとかそーゆーのお前にわかるのかって言ってる!」
一気に言って…冷静になって今の状況に気付く。
教室にはもう俺と二人しか残ってなかったからいいけど…なんていうか…なんか一気に言い過ぎた?
目の前の棗は初めて見るようなショックを受けてる的な顔をしてて。
「香月…」
俺の名前を呼ぶ棗の声がこれまた初めてなくらいに沈んでいた。
ジッとみつめてるヤツの後ろにいる山田がウィンクをしながら立ち上がって教室を出ていき…残ったのは言い切ってスッキリしてる俺と、俺にガツンと言われてショックを受けてる棗。
ここは…俺はフォローとかした方がいいのか?そう思ってたら。
「…ごめん香月…」
棗の口からトーンの落ちきった声が聞こえた。
俺は黙ったまま視線を落としてるその姿をジッと見据える。
「俺…いつもお前がなんも言わないから調子に乗ってた。」
「…は?」
「お前がなんも言わずになんでもしてくれるから…甘えてた。」
「…。」
「最初にヤッた時も怒んないでヤらしてくれて…次の日もその次もだったから…」
「それはお前が無理矢理…」
反論しかけた俺に棗の強い瞳が向けられて。
「お前は俺のモノだってずっと思ってたから…お前のことちゃんと考えてやれてなかったんだと思う。」
珍しい程静かにそう言った。
“お前は俺のモノ”
そんなの…初めて聞いた。
「いつから俺は棗のモノに…」
「物心ついた時からずっと思ってた。だから他の奴とは上手くいかなかったんだと思う。」
「そんなのお前が勝手に思って…」
「そう。だから俺はよくてもお前はダメだった。女と付き合うとか色々。」
「自分勝手過ぎんでしょ…」
「好きだ。」
怒りがふつふつと沸いてきたところで…棗が…?
「好きだ、香月。」
一度聞き逃しそうになったセリフを棗はもう一度、今度ははっきりと言って。
「ちゃんと自分の、の処理はするから…」
「そんなの当たり前だ!」
「もっと大事にするから…」
「それも当たり前だっての!」
「だから…」
カリカリしてる心ごと…その胸に抱き込まれて。
「だからゴメン…香月、俺のモノになって?」
これまた初めて聞くような優しい声でそう言って棗は俺の額にそっと唇を寄せた。
頬を添わせてるヤツの胸がドンドンと早い鼓動を刻む。
思えば。
こんな風に優しく抱きしめられるのさえ初めてなような?
散々人をいいようにしてきたヤツに…そんなことさえされたことがないとかどんんだけ!?
思い返して…なんかムカムカしてきて。
「イヤだ。」
「えっ!?」
抱き締められてる胸から外れて驚き顔のヤツをドンと突き飛ばす。
そのまま自分の席から学指コートとカバンを引っ掴んで俺は足早に教室をあとにした。
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