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「こんな寒い所にいたら風邪ひくよ」
はい、とナオから渡されたのはコーンポタージュの缶。
放課後、学校の屋上から見える
西の空は茜色に表情をかえて
綺麗だなと思う。
カイロ代わりに握った缶が温かい。
「何かあった?」
ヒロと同じ事をナオが聞いてくる。
「俺って、そんな分かりやすい?」
「そーだね。そこが優希の良い所だけど。」
美形でクールだったら絡みづらいじゃん、と笑いながら俺の横に座る。
「母さんが俺に会いたいって言ってる。俺が良いって言ったら、家に来るって。」
「ちゃんと断った?」
間髪入れずに返された言葉。
断って当然というナオの態度に心が慰められる。
頷く俺に、それでいいんだよって
感情を込めない口調でナオが言う。
泣く資格なんか無いのに、ナオに背中を撫でられて、伏せた顔からコンクリートの地面にボタボタと水滴が落ちる。
「健気に好きなふりして、ヒロの幸せ邪魔するなんて、ホントに自分が嫌になる。」
ヒロから好きとか愛してるって言われた事なんて一度も無いくせに。
それくらいの存在で良いって思ってたはずなのに。
「大好きな人に愛して欲しいって思うのは、当たり前だよ。」
黙って俺の背中を撫で続けてたナオが優しく言った。
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