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(問一、今年のクリスマスのメリットとデメリットをそれぞれ答えよ。)
十二月二十四日。つんと冷え込んだ季節の中、この日を待ち望みにしていた者達がいる。この日のためにいい子にしていた子供達。とっておきのプレゼントを用意する大人達。…それから、夜を楽しみにする恋人達。
午後二時過ぎ。朝比奈美晴は天を仰ぐ。そこには、どんよりと垂れこめる灰色の雲、そして空を目指す様に聳える高層ビルの群れがあった。朝比奈が勤める会社も、その内の一つだ。朝比奈は会社前の横断歩道で、同僚と二人、信号待ちだった。時間帯からかそれとも降り出してきた雪を警戒してなのか、周囲の人影は疎らだ。
いつもは雨が降らないか、とハラハラして見る灰色の空も今日は神様からの特別な贈り物に思える。だって、げんなりするような灰色の雲からはらりはらりと舞い散る、雪の欠片があるから。
(メリット一つ目、ホワイトクリスマスになったこと。)
朝比奈のスーツに、上着のロングコートに雪片が落ちては雫となって生地を濡らし、やがて何もなかったかの如く、馴染んでは消えていく。朝比奈はふと、携帯に目を遣った。携帯の画面には、一枚の顔写真。
(メリット二つ目、ゲイ用デリヘルの指名にお気に入りの子の予約がとれたこと。)
朝比奈はすっと視線を地上に戻す。朝比奈のすぐ脇には、服屋のショーウィンドウが佇んでいる。朝比奈は、普段ハリネズミみたいにツンケンしている亜麻茶の髪をワックスで柔らかさを残しつつ撫でつけている。黒くて丸い、円らな瞳がガラスの中で小さく閃いた。実は若干化粧している肌は、日頃よりほの白い。身長は平均より大幅に低く、加えて童顔のため若く見られやすい。現在、片手に携帯。片手に菓子折りの入った紙袋を持っている。
(仕事終わりの六時過ぎには、何もかもから解放されてタイプの彼と素敵なクリスマスディナー☆と洒落こむ予定…だったのに。)
はあ、と溜息をつく朝比奈の隣で彼と同じく信号待ちだった男…夜木千景が目を細めた。
「…全く、気が抜けているな。言っておくが、これはそもそもがお前のミスなんだからな。」
高身長な上にモデル顔負けのイケメン。短い黒髪に怜悧な瞳。おまけにファーストコンタクト高得点獲得間違いなしの甘いウィスパーボイスで毒づかれ、朝比奈はむぅと頬を膨らます。子供っぽい仕草に、気配だけで夜木がふっと嘲笑したのがわかった。
「こらこら。臍を曲げるなよ、…ハリセンボン。」
やんわりと曲げた人差し指に片頬を撫でられ、カッとなった朝比奈は執拗に近寄ってくる相手の腕を厄介そうに跳ねのけた。
「っるっせェな!!今のオレに触んじゃねぇ~よっ!!」
「あははっ。…怒るのもいいけど、ほどほどにな。菓子折り、どっかに投げ飛ばすなよ??」
腹立たしげな朝比奈を見た相手は、より一層楽しげにカラカラと笑い出す。朝比奈はくぅっと奥歯を噛みしめて、キッと前方の数分前から変わらない赤信号を睨みつけた。
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