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歪な愛①
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《レトルトside》
目が覚めると車の中にいた。
視界がぼやけている。
記憶も曖昧だ。
「ん……んー!」
声を出そうとするが、口が何かで塞がれている事に気付く。手足も動かない。縄のようなもので何重にも縛られている。
視界がはっきりしてくると、全く知らない男5人程が車の中におり、俺を見ている。
『お?起きた?』
『おはよ〜レトルトさーん』
馬鹿にしたようにへらへらと笑いながら、俺の名前を口にする。縄がかなりきついので、腕が痛む。
何故俺は今ここにいるのか、いつからいるのか、全くわからない状況に不安で冷や汗をかく。
「んーー!!ん゛ー!」
必死でもごもごと動き声を荒らげるが、車の中、男5人という状況はどうしようもない。
『おー、なんか言いたいみたいじゃん』
『まあ取ってもいいんじゃね』
そう言うと、俺の側に座っている男がおれの口を塞いでいるガムテープを取った。ベリベリっと勢いよく剥がされ、痛みが走る。
「痛ッ………」
「お、俺、なんでここにいるんや?」
男達がおれのほうをにやにやと見つめてくる。
『お前の仲良しなTOP4の奴らが嫌いだからだよ』
TOP4……?俺をこうして拉致ってるのはみんなが嫌いだから?いや、ならなんで俺1人を…?というか、俺を攫うことで何か得があるんだろうか。
「こうして1人1人拉致っていくんか?」
ぎろっと睨み、反抗的な口振りでそう言う。
『違ぇよ、お前を拉致るのが1番あいつらにとって嫌かと思ったんだわ。てか、何その目?今どういう状況かわかってんの?』
そう言うと、俺の隣にいる男は俺のみぞおちを勢いよく殴る。
「…ッあ゛が…ッ!?」
急な激痛に腹部を抑えようとするも、縛られていて出来ない。急所を殴られたせいで、ズキン、ズキンと痛みが長引き、一瞬視界がぐらつく。
『っはははw お前さ、今の状況わかってんだろ?大人しく言うこと聞いて良い子にしてろよ』
どうしようもないこと、抵抗したら命の危険がある事を察し、涙目になりながらこくりと頷く。
せめてここが何処か把握しようと、窓の景色を見ようとした瞬間、目をタオルのようなもので覆い隠される。
「…な、っ」
なにするんだよ、と言いかけ、言葉をぐっと飲み込む。今は俺に命がある事がまだ救いだと思うことにした。
────どのくらい時間が経っただろうか。
『着いたぞ』
そう言われ、俺はこれから何をされるのか分からない恐怖で体が小さく震える。何も見えず、動けない。逃げることもできないだろう。そう考えていると、俺の体は男に持ち上げられ、冷たい床に放り投げられた。
「ッ……」
『軽いなぁ、まじすぐ殺せそうだわw』
“殺す”というワードにびくりと反応する。俺を殺せばみんなが悲しむというのだろうか。だが、そんなに意味があるとは思えない。少し悲しいだろうけど、だったら俺じゃなくて他の3人にした方がダメージはでかいんじゃないか?いや、みんながこんな目に遭わずに済んで良かったのかもしれない。
俺の拘束は解かれ、動けるようになった。
俺の腕にはくっきりと縄の痕が残っている。
動けるようになったところで、俺が逃げれないのは変わり無かった。ここは倉庫のような場所で、俺の周りには先程の5人よりも多い、10人程の男達がいた。
『レトさぁん、やっほー』
馬鹿にしたように俺の名前を呼び、ゲラゲラと笑う。
『なぁなぁ見ろよこれ、みんな心配してるぜ?w』
そう言って、いつの間にか奪い取られていた俺のスマホを見せつけてくる。
……みんな、?なんでみんなが俺の心配を──。
男が見せつけてきたスマホには、俺がみぞおちを殴られ、涙目になり、嗚咽している瞬間の動画をTOP4のグループLINEに送っている画面があった。
「なっ…!?お前ら、!!」
男の腕を掴んだ瞬間、俺の体が宙に浮く。
後ろの男が、俺の首をギリギリと締め上げる。
「ッあ゛…は、ぁ゛っ……ぅ゛…、ッ…」
息が出来ずに足をバタバタと動かす。
だが、びくともしない。
『あのさぁ、車ん中でも言ったけど、大人しくしてろよ』
俺が苦しむ姿を見て、周りの男達はにやにやと見つめてくる。頭に酸素がいかず、意識が朦朧とする。
「…う゛、ぁ゛…………」
死ぬ───。その瞬間、どさっと開放される。
「ッは、っ…お゛ぇ、…はぁっ、はぁ…ッ」
息をするのに精一杯で、床にへたりと座り、犬のように、はっ、はぁっ、と呼吸を繰り返す。嗚咽をしながら、涙目でスマホの画面に目を向ける。すると、
キ『え、』
キ『レトさん?え?』
ガ『何これ』
牛『は?』
みんなの焦った返信が目に入る。
返事をしたい…。だが、そんな俺を見て、男はパシャリとこの状況を撮り、みんなに送る。やめろと言う暇もなかった。
──そうだ。今日は皆との撮影がある。
つまり、今の時間はみんな揃っているのかもしれない。
みんなで俺の弱っている姿を見ているのだろうか?
嫌だ、嫌だ……。
「やめ…っゲホ…ッ…………っや、だぁ……ッ」
必死で懇願するも、虚しく終わる。
その瞬間、電話がかかってくる。
『お?w 出てやるか?レトさんw』
俺の答えなんて聞く気も無かったかのように、即通話ボタンを押される。すると、男が俺が余計なことを言わないように、銃を突きつけてくる。心臓の音がうるさいが、息が整ってきたから、普通みたいに答えられる…。心配、かけたくない。
牛『もしもし!?レトルト!』
「うっしー……?ごめ、大丈夫…」
キ『さっきの動画何!?今どこにいるの!?』
「あ、あれは──」
パァンッ
────え、?
銃声がし、視線をやると、俺の右足から血が出ている。
「ッい゛っっ!!、!?あ゛っ…かはっ…」
なんでだ?俺は何も……。
…ああ、こいつらはみんなを傷つけたいだけなんだった。
俺が苦しめば苦しむほど嬉しいんだ。
ガ『今の音何?銃声か!?レトルト!大丈夫!?』
「ッう゛……ぁ……ひッ………、ぐ…」
うめき声を聞かれないように、唇を噛んで声を押し殺す。
キ『レトさん!!レトさん…ッ!どこ!?どこにいるの!?』
本当に焦った声で、みんなが俺を心配している。
ここがどこかなんてわからない。心配かけたくなかった。
『っあーー…もうめんどくさいから全員来いよ。ここは○○県○○市の□△倉庫だよw』
牛『お前…誰だよ?』
『お前らのことが大嫌いな男の1人だよw
というか、聞こえる?こいつのうめき声w』
前髪をがっと掴まれ、スマホの近くに顔を寄せられる。右足から血がどくどくと流れ、激しい痛みが俺を襲う。
「……ッぅ゛……ぉ゛え…ッ……」
ガ『レトルト!すぐ警察に──』
『あ、サツにチクったらすぐこいつ殺すから』
ガ『…っ!!』
牛「なんでレトルトがそんな目に遭ってんだよ」
「…ッぅ゛、ぁ゛………」
キ『レトさん…っ!大丈夫?俺らがすぐそこに行くからね!!』
「来ちゃ、……ッ…ぁ゛、…だめ、…」
みんながここに来てしまったら、殺されるかもしれない。
俺のために3人も死んでしまうなんて、絶対に嫌だ。
キ『な、なんで!レトさんのこと放っておけるわけがないないじゃん…!!』
キヨくんがそう叫ぶと、電話はぷつりと切られた。
切ったのは男達からだった。
男達は、俺の出血が酷いので包帯を巻いて止血する。
どうせ、今死なないようにする為の一時的な優しさだろう。なんにしても、右足はもう痛みで使えない。つまり、逃げるチャンスがあってもすぐには逃げられないという事だ。
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