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各国壁ドン事情 紫の国編1
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ここは紫のネオネグニオ王国にある、王の執務室。
女王、ベルマ・ノズ・ネオネガーの世話係の一人である彼女は、休憩中の王に、美味しい紅茶と甘いお菓子を給仕している真っ最中だった。敬愛する王と言葉を交わすことができるこの瞬間は、世話係の彼女にとって至福の時間である。
そう、この世話係は、紫の王のことが大好きだった。基本的にリアンジュナイル大陸の人間は自国の王が大好きである者が多いが(無論一部例外もある)、彼女はそれにも増してベルマ女王陛下のことが大好きだった。
紫の王は、愛想がない。物静かで無口であり、必要最低限のことしか話そうとしない。小柄な王は基本的に冷めた顔でどこかジトっとした目付きをしていて、その表情のまま訥々と端的に喋るのだ。声がはっきりしているため、ぼそぼそ喋っているという印象はないが、全体的に陰気そうに見えるクールな人だ。
そんな相手なので、彼女も世話係に任命されたときは、色々な意味で緊張した。紫の王は王であることを差し引いても、あまり外を出歩く人ではなかったので、その個人的な人となりまではほとんど知られておらず、そんな王の元で働くことに一抹の不安を抱いてしまったのだ。勿論王のことは尊敬していたし、王が良王であることは周知の事実だったが、それでも不安なものは不安なのである。
正直、ちょっと怖いな、くらいに思ったりもした彼女だったが、その印象は着任して早々に覆された。
紫の王は、可愛いものをとにかく好む、大変愛らしいお方だったのだ。
あれは、世話係がまだ着任したての頃。紅茶と共に、やたらに可愛らしいミオンのデコレーションが施されたケーキを運んだ時のことだ。なんだってこんなケーキを王陛下に提供するのだろうかと不思議に思いつつ王の執務室に入室した彼女だったが、紫の王はそのケーキを見て、幸せそうにゆるゆると口の端を緩めたのだ。
それがまず第一の衝撃だったわけだが、その後、執務室ではなく王の自室に就寝前のハーブティーを持って行ったときに、世話係は決定的なものを見た。
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