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各国壁ドン事情 紫の国編5
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つまり、だ。王の謎の行動は、世話係の願いを叶えるためのものだったのである。王は恐らく壁ドンの内容を知らなかった。それでも王なりに熟考し、その上で壁ドンを“全力で走ってきた人物の目の前に結界魔法の壁を生成することで、壁にドンさせるものである”と結論づけたのだろう。そして見事にそれを実行してくれたのだ。そう、全ては、民である世話係のために。世話係の望みを叶えるために、王は悩み、考え、壁ドンをしてくれたのだ。あの、冷たいだとか感情の起伏がなさそうだとか言われることもある、紫の王が、である。
それは、――それはとても、とても、
「…………か、……か、わ、いぃ…………」
恍惚と呟いた世話係は、鼻血を噴いてかくりと意識を失った。果たして、気を失った原因は、結界壁にぶつかったことなのか、過剰な興奮によるものなのか。それは定かではないが、どちらにせよ紫の王からすれば予想外の事態である。
「えっ。ちょ、ちょっと、待って……。……だ、誰か、誰か! 回復魔法師呼んできて!」
珍しく焦った表情を浮かべた王が、これまた珍しく叫び声を上げた。その声を聞きつけて飛んできた臣下たちは、たかだか世話係一人に対してそこまで慌ててくれた王に、やはりこのお方に仕えられて幸福だと再認識したとかしないとか。
ちなみに世話係の怪我は大したことがなく、すぐに意識を取り戻した彼女は、澄んだ目でこう語ったと言う。
「心配をかけてしまい、陛下には大変申し訳ないことをしたのですけれど、あまりの多幸感に、血が止められなかったのです……」
何度も言うが、この世話係が特別変なだけで、多くの紫の国民は至って普通の人々であると認識して頂きたい。
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