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各国壁ドン事情 金の国編4
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「では陛下、是非私に壁ドンをしてみては頂けませんか?」
「え、私が、ですか?」
「はい」
笑顔の官吏に、金の王はぱちぱちと目を瞬かせ、それから苦笑した。
「しかし、先程も言ったとおり、私は壁ドンがどういうものなのか、正確には知らないのです」
「ですが、一応ご存知ではいらっしゃる」
「本当に一応です。こう……壁を両手で、どん、とするのでしょう?」
見えない壁を両手で押すような仕草をした王に、官吏は笑みを緩ませて、大体そうです、だから大丈夫ですよ、と笑った。
そうは言われても、と王は困ってしまう。こんな曖昧な知識では適当なことしかできないに決まっているのだが、官吏はそれでも良いと言う。王としては、どういうものかを知った上で正しい壁ドンを披露したいところだが、官吏はどうにも引き下がらず、期待した目で王を見下ろしてくるのだ。
そんな官吏に困ったような表情を浮かべていた王は、少し悩み、それからひとつ頷いて、廊下の壁に近づいた。壁ドンがどういうものなのかは知らないが、民に請われたからにはやらない訳にはいくまい。
そんな気概で壁に向かった王は、両手を小さく振り上げた。
「えいっ」
ぺちん、と両手で壁を叩く。金の王の小さな手と力では、当然大した音はしない。ぺちんぺちんと何度か叩いて、これでは壁ドンというよりも壁ぺちんではないだろうか、と思った王は、官吏の反応を確かめるために背後を振り返った。
するとそこには、
「……っ」
口元に手を当て、明らかに笑うのを耐えている官吏が、抑えきれない笑みで僅かに歪む目で以って、王を見ているではないか。
王の頬に、ふわりと血の色が上った。
「わっ、笑わないで下さいっ! だから知らないのだと言ったではありませんか!」
酷いです、と頬を膨ませる王に、官吏はなんとか弁明の言葉を紡ごうとするのだが、どうにも口を開くと笑い声が出てしまいそうになるらしく、なんだかもごもごとしている。それでも官吏は、どうにかこうにか言葉を吐き出した。
「可笑しい、という、訳では、なく、陛下が、とても、お可愛、らしくて」
結局笑い交じりに吐かれたそれは、そこそこ無礼な発言だったが、そこはそれ、親しさが故のものだ。それを判っているため、王も目くじらを立てることはない。だが、それはそれとして、可愛らしいと言われるのは少々複雑である。幼王の目指すところは、可愛らしさではなく頼りがいなのだ。
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