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各国壁ドン事情 金の国編5
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未だに笑いを堪えようとしている様子の官吏に対し、王は精一杯怖い顔をして言った。
「では、お手本を見せてください」
「……お手本、ですか?」
「そうです、お手本です。私にちゃんとした壁ドンを教授してください」
もし今後壁ドンをする機会があったとき、またこのようなことでは困るのだ。勿論例の本を読んで壁ドンについて学ぼうとは思っているが、実際に壁ドンを見られるならその方が確実だ、と王は考えたらしい。
そんな王の要請に、官吏は困ったように笑った。
「申し訳ございません、ギルヴィス王陛下。壁ドンをするにしても相手が必要なので、ここでは……」
「ああ、そうだったのですね。しかし心配は無用です。私がいるでしょう?」
王の言葉に、官吏が思わず目を剥く。
「……私が、陛下に、壁ドンをするのですか……?」
「ええ。私は教えて頂く立場なのですし、どうぞ良いようにお使い下さい」
「い、いえ、しかしその、流石に陛下を相手に、というのは、少々礼を失しているかと……」
なんとか辞退しようとする官吏に、しかし王は食い下がる。
「良いのです。私からお願いしていることなのですから、お気になさらず」
そう言った王が、よろしくお願いしますね、と微笑んだ。その笑顔に、官吏は思わず言葉を詰まらせる。こうも愛らしく信頼の篭った笑顔を向けられると、その期待を裏切る訳にはいかないような気持ちになってしまうのだ。
困り顔で唸った官吏は、少し逡巡するように目を彷徨わせてから、ようやく腹を括った。
「では、その、……失礼、致しまして……」
「はい、どうぞ」
壁際に立つ王の元に、官吏が近寄る。大人の官吏と子供の王ではかなりの身長差があるため、官吏はその場で片膝をついた。緊張した面持ちの官吏に向かい、王はまた、にこりと微笑んだ。それを受けた官吏が再びうっと歯を食い縛り、何だろうこの犯罪臭、と内心で呟く。
そのまま動きを止めて黙している官吏の様子に、王はきょとりと首を傾げた。
「どうかなさいましたか?」
「あっ、いえ、……大丈夫です。…………そ、それではっ」
キッと覚悟を決めた顔で、官吏は壁ドンをすべく王へ両手を伸ばした。が、そのとき――、
「何をしている?」
唐突に聞こえてきた冷え冷えとした声に、王と官吏の反応は正反対だった。
官吏はヒッと悲鳴を零して固まり、逆に王は声の主を見て、ぱっと目を輝かせた。
「ヴァーリア!」
「ヴァッ、……ヴァー、リア、師団長……」
つかつかと近寄ってくる男、カリオス・ティグ・ヴァーリア師団長は、王を壁際に追い詰めている(ように見える)官吏をじっと見下ろすと、同じ言葉を繰り返した。
「何を、している?」
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