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各国壁ドン事情 銀の国編3
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「おかあさんが、かべどんは、とってもすてきだから、すてきなひとにしてもらうのが、いいって、ゆってましたっ! だから、おうへーかさまに、してほしいなって、おもいましたっ!」
周囲の空気もなんのその、無邪気な少年は続けてそんなことを言った。お陰さまで少年の母親は今にも倒れ込みそうになっていたが、少年は勿論気づかない。
そんな中、王に付き従っていた騎士の一人が、そっと少年に近寄ろうとした。周囲や少年の母親を見かねて、先んじて子供を諌めようと思ったのである。それはそれとして肝が潰れるような思いを(母親が)するかもしれないが、陛下から直接お叱りの言葉を頂戴するよりはマシだろう、と判断したのだ。
ところがそんな騎士を、王が片手で制した。
「陛下」
「良い、イシュティニア。下がれ」
忠実な臣下は、王の言葉を受けて大人しく引き下がった。顔面を蒼白にしている母親には申し訳ないが、陛下の命を退けてまで少年を助けるような義理もなければ、義務もないのだ。
臣下が口をつぐんだのを確認した王が、少年を見下ろして口を開く。
「良いか、お主。国王を相手に、そのような要望を不躾にするものではない」
「ぶしつけ……」
「国王に対して、失礼だと言っている」
王の顔をじっと見つめた少年は、少ししてから言葉を飲み込んだようだった。
「ごめんなさい!」
最初の挨拶と同じくらい大きな声でそう言って頭を下げた少年を、周囲は固唾を呑んで見守っている。見ているだけで心臓が痛くなりそうな光景だったが、視線を外すのもなんだか怖いような気がしたのだろう。
目を細めて少年のつむじを見ている王に、ああ、どんな厳しいお叱りを受けてしまうのだろう、と思った周囲だったが、そんな心配に反し、王が発したのは、厳かであっても険しい響きは感じられない声だった。
「素直に謝れるのは美徳だな」
その言葉に、少年がちょっこりと顔を上げた。窺うように王を見上げた少年は、どうやら王が怒っている訳ではないと察して、きちんと身体を起こす。と、そこでようやく、我に返った母親が子供の元へと跳び出してきた。
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