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そらとぶ とかげ2
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少しの間、そうやって二人と一匹が風に吹かれていると、不意に男が、ああそうだ、と声を上げた。
「キョウヤ、ここも良いが、あちらの方に行かないか」
男が指差した方を見て、少年が首を傾げる。
「あっち? 何かあったの?」
「ああ。向こうの方に森があるのだが、その中にある泉が蝶の群生地なのだ」
「蝶の……」
「沢山の蝶が湖上で舞っている姿がとても美しくてな。きっとお前も気に入るだろう」
男の言葉に、少年がこくりと頷いた。それを見て、では早速向かおうか、と笑みを深めた男に、でも、と少年が首を傾げる。
「遠いんでしょう? 帰り、遅くなっちゃわないかな」
「ああ、なに、ティアに乗っていけばすぐだろうさ。なぁ、ティア?」
男の笑顔を向けられて、トカゲは少年の肩に上ると、むんと自信たっぷりに胸を張った。もちろん任せて、と全身で主張する姿を横目に見て、少年が小さく笑う。
「確かに、そうだね。……お願いしてもいいかな、ティアくん」
細い指先に撫でられ、トカゲはこくこく頷いてから、少年の頬に軽く口先を押し当てた。
それからぴょんっと草の上に降り立ったトカゲに、少年が距離を置くようにそっと離れる。逆に男の方はトカゲに近づいていき、膝を折ってトカゲの前に手を伸ばした。
「ほら、ティア」
促されるままに、小さな口がかぱりと開けられる。そこに男が、炎を放り込んだ。
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