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クラリオの日常1
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雨季が過ぎたリィンスタット王国の、穏やかな昼下がり。
砂漠の王国を統べる黄の王は、珍しく城下に抜け出すことなく、王宮に籠っていた。と言っても、王が居座っている場所は執務室ではなく王宮書庫である。
床に直接座り、難しい顔でページを捲っている王の傍らには、書庫から引っ張り出したらしい何冊もの本が積み上がっている。暫くそうして目を走らせてた王は、手にしていた本をぱたんと閉じて、はぁとひとつ大きな息を吐き出した。そして、指で眉間を揉みながら、次の本へと手を伸ばす。
と、そんな王の元に近づく足音が三つ。
本から足音の方へと意識をやった王が顔を上げれば、王から見て右手の本棚の角から、一人の女性が顔を出した。
「見つけたぞクラリオ! こんなところにいたのか!」
そう言ったのは、王妃の一人、アスカ・コノエ・リィンセンであった。王妃と呼ぶには簡素で、どちらかというと騎士のような格好をした彼女の腰には、長剣が下げられている。
「アスカちゃーん! なになに? 寂しくて俺に会いに来ちゃった?」
へらっと笑顔で言った王に、アスカは呆れた顔をした。
「私がそんなたまに見えるのか?」
「アスカちゃんは強くてかっこいいけど、だからと言って寂しく思わないなんてことはないでしょー? だから、有り得ないとは思わないかなぁ。いや、勿論そういうのを率先して見せるような子じゃないのは知ってるけど、他には見せない姿でも、俺には見せてくれるでしょ? そういうとこ、信用して、」
笑顔のまま言葉を綴っていた王だったが、全てを言い終える前に、つかつかと歩み寄ってきたアスカの手によって口を塞がれた。むぐっと変な声を漏らして見上げてきた王を、やや頬を赤くしたアスカが睨む。
「よく回る口だ」
言われた王は、にこっと笑み崩れてから、口を塞ぐアスカの手をそっと外して、そのまま彼女の掌に唇を落とした。
「俺、奥さんに嘘ついたりおべっか言ったりはしないよ?」
「…………知っている」
アスカがぷいっと顔を背けたとき、彼女の後ろから別の声がした。
「あー! アスカちゃんが照れてますぅ!」
「あらあら、はしたないですよ、フィルミーヌ様」
聞こえた二つの声に、アスカがばっと振り返る。そこにいたのは、先程の三つの足音の残りの持ち主、王妃フィルミーヌ・イザベル・リィンセンとアメリア・ヒルデ・リィンセンだった。
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