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円卓懇親会20
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まぁ、予想の範囲内ではある。銀の国は閉鎖的な国で、わざわざ他国の文化に触れようと思う人間は少ない。そんな国の王が他大陸から取り寄せた菓子を口にするとは、あまり思えなかった。そもそも、銀の王は金の国の手広い貿易行為を好ましく思っていないのである。
しかし、判っていたとはいえ、少しばかり気落ちしてしまう。顔に出せば幼さを晒すからと努めて表情は変えなかったが、受け取ってもらえなかった菓子箱を見て、ギルヴィスは少ししょんぼりした。
そんな時だった。
「あ、何、要らないの? じゃあ俺が食べるね」
そんな言葉と共に、ギルヴィスの手からひょいと菓子箱が掻っ攫われた。
余りにもごく自然に持っていかれたため、一瞬ギルヴィスは何が起きたのか把握できなかった。一拍遅れ、持っていかれた先に目を向けると、そこには既に箱を開封して、菓子を取り出している男の姿があった。
黒の王だ。いつも通り何を考えているのかよく判らない顔をした彼は、他人宛のお菓子を貪ろうとしていた。
「あっ、あのっ、ヴェールゴール王!」
「え、なに?」
首を傾げた黒の王が心底不思議そうな顔で見てくるものだから、一瞬、横取りを咎めようとしている自分のほうが間違っているのかと思ったギルヴィスだっただが、そんなわけはない。いきなり人のものを持っていくほうがおかしいはずだ。けれどなんとなく、ちょっとだけ勢いがなくなってしまい、ギルヴィスは控えめに黒の王に伝える。
「……あ、あの、それは、その、……エルキディタータリエンデ王に、ご用意したもので、ヴェールゴール王の分はちゃんと、別に……」
「え、でも要らないんでしょ? 要らないって言ってたもんね? なら俺が食べても良いよね?」
「好きにせよ」
銀の王の端的な返答に、何故か黒の王は少しだけ胸を張るようにした。
「ほら。じゃあいただきまーす」
「あっ」
菓子を口に放り込んだ黒の王は、少しの間むぐむぐと咀嚼して、うーんと首を捻ると、呆気に取られているギルヴィスを見た。
「これあれだね、味はいいけど、なんかふわふわしてて食い出がない。食べた気がしないや」
そう言った傍から次の菓子を口に放り込んで、どんどん飲み込んでいる。
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