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円卓懇親会23
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ここまでの一連の流れで、ただひたすら呆気に取られていたギルヴィスだったが、二つはっきり把握したことがある。遅刻欠席魔の黒の王が今日に限って早く来ていたのは、いち早く食事をしたかったからだろう、ということ。その際にがっちりと世話役に掴まれていたのは、放っておくと勝手に先に食べてしまうからだったのだろう、ということ。ギルヴィスが最初に抱いた散歩のイメージは、あながち間違いではなかったのだ。
(……ヴェールゴール王の傍の、大皿の山……あれ、もしかしなくても、全部、ヴェールゴール王が……?)
今までのやり取りを見るに、有り得る話だ。黒の王はやや細身で、縦にも横にも平均的な身体に見えるのだが、本当に一人で平らげたのだとしたら、一体どこにそれだけの量が入るのだろう。
黒の王へ驚嘆の視線を横目に向けつつ、ギルヴィスはそろそろと白の王に近寄った。思わず忘れてしまいそうになったが、当初の目的を果たそうと思ったのだ。挨拶回りは彼女で最後である。
差し出された菓子を見て、白の王は柔らかく慈愛に満ちた笑みを浮かべた。
「先ほどヴェールゴール王に差し上げていた、マリム、というお菓子ですね?」
「はい、そうです。どうぞお召し上がり下さい。若輩者ですが、よろしくお願い致します」
「ありがとうございます。こちらこそ、よろしくお願い致しますね、ギルディスティアフォンガルド王。あなたは王になるべくしてなった方。若さを必要以上に恥じ入ることはないと思いますが、まだスタートラインだということもまた事実。どうぞ、何かあった際には、遠慮せずお話してくださいね。できうる限りの手助けはさせて頂きます」
「っ、ありがとうございます……!」
優しい言葉に、ギルヴィスの胸がぐっと温かくなる。先達に恥じぬよう、頼ってばかりでいるつもりはないものの、心からの気遣いはとてもありがたかった。ほどけるような笑顔を見せたギルヴィスに、白の王は変わらず慈愛の笑みを見せている。
まるで、母のような方だ、とギルヴィスは思った。ギルヴィスの実母、という意味ではなく、子を慈しむ者という概念の『母』が形になったようだ。流石は宗教国家フローライン王国を統括する存在、と言ったところだろうか。
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