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Quiet rain
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≪二人は運命…いや、こうなることが宿命だったのよ…私は嬉しいわ≫
先日、カマたくさんに報告したときにそう言われた。
宿命―――俺はそんなもん信じないけど、でも俺たちを見てカマたくさんは涙を流すほど喜んでくれた。
喜んでもらえたならそれは良かったけど…
カマたくさんに報告した2日後に何故かりんたろーさんだけ、再度カマたくさんに呼び出された。
何を話したのか聞いたら、
≪んー…まぁ、心得みたいなのを教えてくれただけだよ≫
俺がどんだけりんたろーさんのこと見てたか、りんたろーさんはわかってない、こういう答え方をするときは大体何か隠してる。
様子もおかしい。
話聞きたいし、俺も話がしたいけど…
ちょうどカマたくさんに報告した直後に俺の執筆本の出版が大詰めになってきて、やれ校正だ、やれ打合せだ、取材だとそれどころではなくなり、りんたろーさんと二人きりになれる時間が全くできなくて、気づいたら現場でしか会えなくなっていた。
今までも執筆に詰まって俺が精神的にいっぱいいっぱいになったときは何度もあった、その度にりんたろーさんはLINEくれたり、差し入れくれたり、仕事の調節も快諾してくれた、時には何も言わず優しく見守ってくれたときもあった。
まぁ、あのときに比べたらなんてことはないけど…
でも最後の追い込み、ちょっとぐらいりんたろーさんの励ましが欲しいなぁ…なんて。
最近、やけに個人チャンネルのほうの撮影するようになって、コンビの仕事抑えてるから仕方ないにしても脇元さんからりんたろーさんのスケジュールを聞いて個人チャンネルの撮影って聞くと落ち込む自分がいる。
(こじさんといるほうが楽しいのかな…)
でも何より不思議なのは―――
「おはようございまーす」
「あ、おはようございます」
「あれ、りんたろーさんは…?」
「もう来て、先にメイクしてもらってますよ」
「最近、早いよね…」
「なんか寝れないみたいですよ、早く目が覚めちゃうんですって」
「ふーん…」
これだ。
いつもなら早く来ても楽屋で寝てたり、電子タバコ吸ったり、スマホいじったり、なんか食ってたりするのに何故か早く来て自分だけメイク室に行ってしまう。
一回だけならまだしも…さすがにおかしいって思うっしょ。
「兼近さん、収録後はこのあと予定通り16時でいいそうですよ」
「えっ、収録後?」
「えっ、出版社の方との打ち合わせ…私、言いませんでしたっけ?」
「あー…ゴメン、言ってたよね、忘れてたー!!」
「もう大詰めですから、今日で最後かあってもあと1回ぐらいって担当の方が仰ってましたから、あともう少しですよ」
「うん……色々ありがとね」
「いいえ。これ乗り越えたら好きなだけりんたろーさん、独占できますから」
「うん……
って、はっ!?!?何それ、なんか俺が寂しがってるみたいじゃん!!」
「え、違うんですかー?」
「ガキじゃねーんだからないないっ!!」
「あらそうでしたかぁー」
10歳も年下の女子マネージャーにまんまといいようにされる俺…30のおっさんが何うまく転がされてるんだか。
でも図星……
これが落ち着いたら、りんたろーさんは誉めてくれるよね?
頑張ったな、よくやったなって大きな優しい手で頭撫でてくれるよね?
りんたろーさんに話したいことたくさんある、聞いてほしいことも。
そして……
「兼近さん、メイク室いかないんですか?」
「あ、行く行く」
(やべぇ…今、変なこと考えそうになった…でも…あの日以来…)
ガチャッ。
「あ、おっす」
「あ、おはようございます…」
(いつもならおいーっすなのに…)
「ん?どした?疲れてんのか?」
「え、いや眠いだけっす」
(いつもなら頭クシャクシャってしてくれるのに…)
「そ。早くメイク行ってきなー。山岡ちゃん、あのさ―――」
(いつもなら「大丈夫か?」って…「無理すんな」って頭撫でて俺の顔を覗き込むように言ってくれるのに…)
りんたろーさんはもう俺のことなんか視界に入ってないかのように山岡さんに話しかけていた。
狭い楽屋にいるのに何を話してるのかわからないぐらい全ての言葉が過ぎ去った。
楽屋を出てドアを閉めた瞬間、足が動かなくなり、そのままドアにもたれかかる。
(気のせい、気のせい…)
別に無視されたわけじゃねーじゃん、そういうこともある…
いや、明らかに今までとは違う―――
お互いの気持ちを確かめ合った夜以来、仕事と本の執筆で再びお互いに触れることができたのは二週間後の1回だけ…そしてそこからもうそろそろ三週間が経とうとしている。
(違うよな…そういうんじゃないよな…でも…俺は平気だけどりんたろーさんは結構…)
メイク室は楽屋からわずか5m先なのに先が見えないトラックに立たされてるようだ、足も重い。
(雨…降ってんだよな…)
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