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After the rain②
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出版社との打ち合わせは最後の確認作業程度で無事事なきを得た。
「終わったーーーっ!!!」
「おつかれさまでした」
「ありがとうございました……あぁ~…ホント、エモいよなぁ…まさかこちらで本を出版してもらえるなんて」
「不思議な縁ですね。今度は幸せスクープいただきますね」
「幸せスクープ??あーあ…それなら俺…」
(俺…今幸せ…??
うん、幸せだよ、芸人になって本も出せて毎日誰かを笑わせることを考えることができて、大好きな人と毎日…)
「あれ、なんかその感じはもう既に幸せとか!?」
「はい、今日生きてるだけで幸せですから」
「あー…なるほどなるほど。じゃぁ、こちらも更に腕のたつカメラマンを雇うしかないですね」
「どうぞご自由に~♪」
「ハハッ。では改めてこの度はご出版おめでとうございます」
「ありがとうございます、出版日までまたご迷惑おかけするかもしれませんが、よろしくお願いします」
「あ、雨がやんでる」
「ホントですねー。兼近さん、あと少しです、頑張りましょう」
「うっす!!!」
迎えのタクシーが来て、乗り込もうとしたその瞬間、生温い風が俺の心臓をえぐった。
あのときの風だ―――なんで今頃?
「兼近さん、どうしました?」
「あ、何でも!」
あのときと同じ感覚、これから何か起きるのか……?
いや、ただの湿気を含んだ風だ、まだ梅雨はあけない。
ただそれだけ―――
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