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中島臨太朗と兼近大樹の創世記①
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20:00!?
すごい…俺の念が通じたのか、いつもなら21時近くまでかかる収録現場なのに1時間も早く終わるとは…
(まさか神様って本当にいる!?)
楽屋に続く通路を一人歩きながらこの奇跡を感謝した。
(いや、単にパイセンの伸ばしが今日は甘かっただけか…じゃぁ、パイセンに感謝!)
楽屋のドアを開けようとしたとき、
「かねちーっ!!」
「あ、おつかれさまですっ!」
「ねぇ、この後空いてる?よかったらご飯食べに行かない?連れてってあげたいところがあるのよー。本当は閉まっちゃう時間なんだけど、私がいけば特別開けてくれるのよね」
この女性は悪い人ではないんだよね、いつも声かけてくれるし、差し入れもくれるし、俺のこと心配もしてくれる、この番組ではこの方の解説や説明がとても重要なのでスタッフさんも気を使ってる。
ただ…ホントすいません…俺はちょっと苦手だったりする…
「すみません、ちょっとこの後あって…」
「えー、マネージャーさんは今日はこれで終わりって言ってたよー?」
「あ、仕事じゃないんですけど…」
(りんたろーさんとの大事な時間なんですっ!!)
「デートなわけないよね?なんの用事?」
「えっと…りんたろーさんとネタ合わせがあって…」
「なら、臨太朗くんも一緒でいいからさ、本終わったんでしょ、打ち上げしよ♪」
(すみません、俺は二人きりで打ち上げしたいんです…)
「ね、行こ?」
「すみません…どうしても今日合わせないとまずいんです…」
「すいません、どうしても今日合わせて形にしないと俺ら来月ルミネ出れないんです、いい加減同じネタばかりで飽きてきたってルミネの支配人に言われちゃって…だから新ネタ合わせるから俺がかねちに用事入れるなって言ったんです」
収録後、パイセンと話してたりんたろーさんが戻ってきてくれた、正直ホッとした。
「え、そうなの…?臨太朗くんが言うならしょうがないかぁ…でもいくらコンビだからってたまにはかねちのこと解放してあげたほうがいいよー?」
「すいません、どうしてもコイツのことになると過保護になっちゃうんす」
「次は私に貸してよねー」
「俺のことも借りてくださーい♡」
「はいはい」
「すいません、、おつかれさまでしたっ!」
「あ、おつかれさまでした!」
最後は二人揃って頭を下げ、楽屋に入った。
「かねちは物じゃないんだけどなぁ~」
「すみません、なんかりんたろーさんが悪いみたいになっちゃった…」
「いや、悪者よ、俺。皆のかねち、独り占めしちゃってるんだもん」
(SNSでも俺の濃ゆいファン共がりんたろーさんが俺を無理矢理働かせてる、拘束してるって言ってんだよな…)
「逆なのにね…」
「え?」
「俺がりんたろーさんを常に監視して、りんたろーさんに発注かけてるのにね」
「ハハッ。相方を独り占めしたいのと、相方を監視したいの、俺らやべぇコンビじゃんっ!!」
「もうそれ以上のことしてるし」
「…たしかに」
二人で大笑い、外まで丸聞こえかも。
コンコン――
(あ、さっそく苦情きちゃったかな…)
「おつかれさまです、りんたろーさんに頼まれたの買ってきましたよ」
苦情ではなく、弁当2つぐらい入ってんのかってぐらいのビニール袋を2つ持って脇元さんが入ってきた。
このあとの俺との打ち上げのためのおつかいを
りんたろーさんが脇元さんに頼んでたようだ。
脇元さんが入ってくるまで笑い過ぎて着替えの手が止まっていたりんたろーさんが脇元さんがテーブルの上に2つのビニール袋を置いた瞬間、もうチャージで着替えを終わらせ、袋の中のものを確認し始めた。
何をかってきてくれたんだろ、俺も着替えながら様子を見ていた。
「中華麺と…ラー油ともやしとひき肉ね。あとこっちはチキンね、わっきー、マジありがとーっ!!」
「チキン?」
「ほら、ここの近くのホテルの中にあるレストランが出してるチキン、前にケータリングであったの、覚えてない?で、おまえが“すっげえ、ウマイっ!!”って言ってたの。そしたら、最近“またあのチキン食いたい”って話をおまえがしてたって松下から聞いたからさ」
「あー、あのメチャ旨ピリ辛チキンっ!!!」
「そうそう。調べたらテイクアウトやってたから」
何気なく言ったこと、覚えててくれてたのか…
(にしても…二人分にしては多くない?大小合わせて4つもあるけど……)
「これ、小さいのは山岡ちゃんね。これはわっきーと兼近んち」
「えっ!?」
「わっきー、ごめん、これ、帰りに松下ともっちーに届けてくれる?」
「了解です。
すいません、ごちそうさまです♪」
「わざわざ二人の分も…?」
「うん」
さらっとこういうことできちゃう…さっきもさらっとやんわりと勧誘を断ってくれた…ガキの言い合いしてたかと思えばやっぱり大人なんだって思わせる…時々俺に合わせてくれてることが申し訳なく思うこともあるけど…でもそれが嬉しくて楽しくて結局、りんたろーさんのお兄ちゃん感に甘えてしまう。
(実際、兄貴と歳近いもんな…)
≪兄貴の代わりはできないよ≫
(・・・・・・)
なぜかあの夜のことを思い出して恥ずかしくなった。
「ラーメンは何ですか?」
脇元さんが不思議そうにもうひとつのビニール袋を見て言った。
そうだ、そう!
俺もそれ気になってたんだ!!
何ならチキンよりも気になってたぐらい。
「これはね、VOCEの企画で手作り味噌作ったじゃん?その味噌がメッチャ旨くて。そしたら教えてくれた先生が“これで味噌ラーメン作ったら美味しいですよ”ってレシピ教えてくれて。試しに作ってみたらバカ旨でさーっ!!かねちに食わせてやりてぇなって思って」
俺はその瞬間、脇元さんに言われたことを思い出して脇元さんの方を見た。
脇元さんは…
「ね、僕の言った通りでしょ」と言わんばかりに微笑んで俺の方を見てた。
嬉しい…嬉しい…
嬉しい以外の言葉があるなら教えてほしい。
うれしくてうれしくて…大好きで…なんて言ったらいいかわからず、
「ちゃんと手洗ってくださいね」
(あーー…何言ってんだよ、俺…なんで素直にありがとうって言えないんだよ…)
今、ありがとうなんて言ったら多分、泣く。
「ぶーーーっ!!!全くおまえはーっ!!」
りんたろーさんが大声で笑いだした。
「兼近さん、露骨すぎますよ」
脇元さんは手で口を抑えながら明らかに笑いを堪えてた…いや、堪えきれてないっ!!
「なんだよ…」
「わかった、わかった、ちゃんと手は洗いますよー」
「指輪外してくださいね」
「ハイハイ、クククッ…」
うれしくてうれしくて大好きで……
俺は天邪鬼になるのがやっとだった。
スタッフの方達と今後のスケジュールを確認していた山岡さんと玄関前で落ち合い、山岡さんも嬉しそうにチキンの入った袋を受け取っていた。
「では、月曜の午後によろしくお願いします」」
「わっきー、明日だけは……」
「大丈夫です、飛び込みはストップさせます、もちろんルミネも」
「よかったぁぁ…ありがとう」
「本当にすみません、ありがとうございます」
二人に頭を下げて俺は先にタクシーに乗り込んだ。
「じゃ、おつかれさんでしたっ!」
りんたろーさんも後から乗り込む。
見送ってくれる二人の姿をタクシーが大通りに出て見えなくなるまで俺は座席から振り返って見ていた。
「わっきーと山岡ちゃんにもやっぱり話さないとな」
「うん」
俺もそう思ってた。
「ちょ、これ見てよ」
「何これ、これが今流行ってんの?」
りんたろーさんが見つけたTikTokの動画を見ながら笑い合ったり突っ込んだり。
いつも通るレインボーブリッジが今日は一段と輝きが増して綺麗に見えるのはこれからのことが楽しみだからってだけじゃない、運転手さんから見えないように繋いでるお互いの手と手が少しドキドキしてるからかな―――
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