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Beyond Eden①
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久々に来たりんたろーさんの部屋…懐かしいにおいに鳥肌がたつ。
もう何十回も来てるのになぜか玄関で立ち尽くしてしまい、脚が動かない。
「かねちー?」
「あ、今、いきまーすっ」
タクシーでは早く、早くって思ってのにマンションのエントランスに着いた瞬間、脚に緊張が走り、少しりんたろーさんに会うのが怖くなった。
嬉しいのにこの胸騒ぎはなんだ…?
別にそれで帰りたいとかそういうんじゃないんだけど。
「おっじゃましまーす」
手を洗って、リビングに入った瞬間、胸騒ぎなんてただの自分のやり過ごしだった。
「なんか…パーティーでもすんの!?」
「え!?別に普通よ?」
レースのクロスがひかれた丸いテーブルの上には間違って買ったとされるきのこの和風パスタ、醤油の香ばしい香りがダイレクトに俺の鼻と胃を刺激した。
横には…何、なんかオシャレな…宝石のような真っ赤なザク切りトマトと白いの…何??
なんかわかんないけど、店にありそうなサラダみたいなやつと…
チャラいシャンパンか…??
紫の瓶の色が部屋で輝きを放ってる。
「松下から手渡されたよね?」
「あ、うん」
「おぉー、カチコチ!!温めてくるから座ってな」
「いいの?」
りんたろーさんが「えっ?」って顔して俺を見てる。
え、なんか俺、ヘンなこと言った…?
「ブッ…」
「え!?」
「おまえ、いつまで帽子とマスクしてんのーっ!!!で、いつまでリュックしょってんのーっ!!!アハハッー!!!」
えー、なんで大笑い…わけわかんねぇ…
(!?)
りんたろーさんが俺の帽子を取り、マスクをずらすと軽く唇にキスしてきた。
「来てくれてありがとう」
「パスタにつられた」
「俺じゃないんかーいっ!!!」
「アハハハッ!!!」
PANAのシチュー煮がテーブルに並んで、ワイングラスにはシャンパンじゃなくてノンアルコールワインの赤紫がゆらゆらと輝いている。
「ノンアルコールワインって葡萄ジュースじゃないんだね」
「これ、味はしっかりワインよ?」
「すげぇなー。あ、ねぇ、りんたろーさん、この前もっちーがさー……」
タワマンの一部屋でのありふれた時間。
料理なんてなんでもよかった、それこそカップラーメンでも、飲み物なんて水でよかった。
ただただりんたろーさんとふたっりきり、2ヶ月ぶりにゆっくり話せるこの空間が何よりも贅沢で幸せなのに…
激ニブな俺でさえわかる、わざと買ったであろう俺好みの二人分のパスタ、野菜不足な俺のために作ってくれた…カプ…カプチーノ…??
いや、違う…
忘れたけどトマトとチーズのサラダみたいなカプなんとか…
同居人の手料理、俺達を知ってる人からの差し入れのノンアルコールワイン…
最高のフルコースだよ、ありがとう、りんたろーさん―――
二人並んで後片付け、ソファに座って一緒に気になってた配信番組を観て、そのうち俺が先に風呂に入って……
何…またこの胸騒ぎは…
胸がざわついてる…痛いとかチクチクとかじゃない…波風が騒ぎたてる手前みたいな…高揚感とは違う。
「かねち?」
「えっ?」
「急に話止まったから…どした?眠い?」
「寝ていいの?」
「えっ……あー、眠いなら…しょうがないけど…」
「嘘、嘘!!りんたろーさん、そんなあからさまにショボンしないでー」
笑いながらりんたろーさんをポンポンする。
違うよ、ホント、眠くはねぇーんだよ…でも、なんだ、この感じは。
「マジで眠くないからっ!でももう風呂入ってきていい?」
「うん。あ、入浴剤入ってないから勝手に入れて」
「ほーい」
眠くはないけど、ちょっと落ち着かせないと。
これからなんだぞ、本番は!!
「あ、おまえ用のシャンプー、棚の中」
「あざーっす」
夜は長い、恋せよチャラ男―――
ホントはドキドキ、平気なフリしてバクバク、
胸騒ぎだってそりゃ起きるっしょ。
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