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第四章
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パッタリとストーカー行為も無くなり、あの男も現れなくなって平和な日常もそろそろ十二月に入ろうとしていた。
「ちょっと、悠叶さんっ!起きて下さいって!」
金曜のTOP SECRETで、酔っ払ってテーブルに突っ伏してる悠叶を迅鵺は揺さぶって起こす。
けれど、涎を垂らして眠ってる悠叶はビクともしない。
「あ~もう!悠叶さんに酒飲ましたの誰だよっ!?」
悠叶は、極度に酒に弱かったのだ。かなり薄い水割り一杯でも酔ってしまうくらいで、迅鵺はそれ以上飲ませた事は無かった。
「ああ~・・すんません。こんなに弱いと思わなくて、つい酔ったらどうなるのかと・・」
名乗り出たのは、うちのホストの中でも好奇心旺盛なワンコタイプで、お客から可愛いと評判な後輩ホストだった。
「翔(しょう)てめぇ!面倒くせぇことしやがって!」
申し訳なさそうにしてはいるものの、若干笑ってる翔の首に、迅鵺は腕を回して脇に挟むと締める仕草をする。
「わああああっ!マジすんませんって!許してっ迅鵺さんっ!」
悠叶以外のお客全員を見送った店内には、酔い潰れた悠叶とホスト達が居て、悠叶が居るテーブルの側で迅鵺と翔がじゃれている。
そんな二人のやり取りにホスト達の笑い声が聞こえてくる。
「────まあ、今回はこんくらいで許してやる。」
最初から大して怒ってはいないが、この言葉には“もうするな”という、悠叶の担当ホストとしての意味を含ませている。
翔もそれは分かっているようだった。
今度は真面目な顔で返事をする翔を確認した迅鵺は、目の前の問題に頭を悩ます。迅鵺は悠叶の住処を知らないのだ。
どんなに起こしても起きないので、仕方なく酔い潰れた悠叶をひとまず迅鵺のマンションへ連れて行く事にした。
デカい図体の悠叶を背中に乗っけた姿は、なんだか迅鵺が小さく見えて滑稽だ。
眠って完全に力が抜けている悠叶の身体は思っていた以上に重くて、悠叶の足は引き摺られながら移動される。
呼んでおいたタクシーの前までなんとか移動した迅鵺は、後部座席に一緒になって寝転ぶ形で乗せた。
身長175㎝、体重62㎏の迅鵺が、身長184㎝、体重76㎏の悠叶を運ぶのは骨が折れた。
「あ"~マジ重いっ!しかも、全然起きねぇしっ!!」
迅鵺は、悠叶を背に寝転んだ体制のまま首だけを後ろに動かし、悠叶の寝顔を見ながら文句を言うが、悠叶はというと、やはり涎は垂らしたまま幸せそうに眠っている。
そんな悠叶の寝顔を見ていると、迅鵺は段々と馬鹿馬鹿しく思えてきて、悠叶の頬を軽くつねった。
「気持ち良さそうに寝やがって・・」
そんな迅鵺に響弥が近付いて来て、体を支えるようにタクシーの上に手を乗せてタクシーの中を覗き込んでくる。
「迅鵺、お前大丈夫なのか?」
響弥は、完全に悠叶を信用している訳ではない。もしものことを考えて、迅鵺を心配しているのだろう。
迅鵺は、心配してくれる響弥を安心させるように笑いながら答える。
「大丈夫っすよ。見て下さいよ、コイツの腑抜けた寝顔。」
涎を垂らして眠ってる悠叶の姿を見ると、響弥は諦めたように溜め息を吐き、迅鵺の肩をポンポンと二度叩いた。
「まあ、何かあったら直ぐに呼べよ。」
そう言って店内へと入っていって、迅鵺はしっかりとタクシーに乗り込むとマンションへ向かった。
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