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第四章
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────なんだ?なんか、いい匂いがする・・
迅鵺は鼻をくすぐる匂いに違和感を感じて、まだ重たい瞼を無理やり持ち上げた。
陽は完全に昇っていて、今まで眠っていた迅鵺にとって明るい陽の光は目に刺激が強く、光を手で遮るように目元を覆う。
「眩しっ・・つか、ねみぃし・・」
迅鵺は、また瞼を綴じてしまいそうになったが、なんとも魅力的な匂いにつられて目を擦りながら匂いの元を探す。
ソファーで寝ていた体を起こして、周りを見渡すとキッチンに立つ悠叶の姿を見つけた。
「────悠叶さんっ!?」
迅鵺は自分のマンションのキッチンに悠叶が居た事に驚いたけれど、すぐに昨晩、酔い潰れた悠叶を連れて帰ってきた事を思い出す。
「あっ、迅鵺さん目が覚めたんですね。」
迅鵺の声に気付いて、キッチンからひょっこりと顔を出す悠叶。
「悠叶さん・・何してるんすか?」
「えっと・・昨日は、迷惑掛けちゃったみたいだし、お礼になるかは分からないですけど何か作ろうと思って・・でも、冷蔵庫にはほぼ水しか無かったので近くのコンビニに行って来ました。」
悠叶は、迅鵺が居るソファーの目の前にあるテーブルの上のカードキーを指差して“勝手に借りちゃってすみません”と付け足した。
「悠叶さん、料理とか出来るんすね」
迅鵺は、悠叶が居るキッチンに欠伸をしながら歩いて行くと、丁度お味噌汁をよそっているところで、側に置かれたお盆の上には焼き鮭と、刻みネギが乗ってる納豆に味付けのりが添えられている。
よそわれたお味噌汁のお椀を覗き込むと、ワカメ、豆腐、ネギ、油揚げが入っていた。
久しぶりの手料理に、久しぶりの和食。迅鵺は、まるっきり料理が出来ないので、大抵コンビニ弁当か外食だった。
「コンビニで揃えた食材なので、大した物は作ってないです。鮭は温める程度に焼いただけだし、納豆なんかネギ刻んだだけですよ。」
そう言って微笑む悠叶に、迅鵺はすかさず突っ込んだ。
「いやいや!味噌汁作ってるじゃないっすかっ!」
お味噌汁が入ったお椀を指差しながら、一歩、悠叶に近付く。
そんな迅鵺の前に、悠叶は両手の平を向けてあたふためく。悠叶の視線は、あっちいったり、こっちいったりと焦点が合わない。
「あっ、あのっ・・迅鵺さん、服着ません?風邪も引いちゃいますしっ」
「そういえば、ちょっとさみぃなあ・・」
迅鵺は、ボクサーパンツ一枚の姿で身震いすると、寝室にあるクローゼットへと向かう。
悠叶に背を向けた迅鵺の背中を悠叶は見詰めていた。
まるで、好きな人を遠目で見てる、恋する女の子のような熱の隠った視線だった───・・
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