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第四章
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「────鮎沢さん、ちょっといいですかね?」
急に現れた響也に、悠叶は思わず驚いたが足を止める。
どうやら、迅鵺のマンション近くのコンビニから出てきたようだ。
「────響也さん?・・・なんでしょう?」
響弥から感じる雰囲気が刺々しくて、悠叶は訝しげに答えた。
そんな悠叶にお構い無く場所を変えると提案し、誰も居ないTOP SECRETの店内へ二人は移動した。
「あの・・夕方から仕事があるので、あまり長くは・・」
「ああ、別にいいですよ。すぐに終わるんで。」
響弥は、悠叶が言い終えるのも待たずに言って退ける。煙草に火を点けて悠叶に詰め寄った。
「あんた、何を企んでる。」
響弥の低い声が、悠叶の顔に煙草の煙と共に纏わり付く。
悠叶の表情からは、いつものような柔らかさが欠片の程も無くなっていて、変わりに響弥を刺すような冷たい目で見下した。
「────企む?一体何をですか?」
ゾクリと何かが背中を這うような嫌な感覚に、響弥は確信を持った。
やっぱりコイツは“迅鵺を狙ってる”と。
次の瞬間、響弥は悠叶の鎖骨の辺りに右腕を押し当てて壁に追い詰めた。
「てめぇ、あんまふざけたこと言ってっとシバくぞっ!」
「ああ・・あなたは、迅鵺さんが好きなんですね?」
凄い剣幕で詰め寄られているというのに、悠叶は少しも臆する事なく言った。
悠叶の言葉に、一気に頭に血が上ったせいで顔を真っ赤にさせると、響弥は怒りに耐えられなくなり力任せに悠叶の右の頬を目掛けて拳を振るった。
ゴッと鈍い音が鳴り、悠叶は口の中が切れたのか、口から血を垂れ流して床に点々とした血痕ができる。
「俺が、迅鵺を好きな訳ねえだろっ!?」
響弥は酷く興奮していて、肩で息をしながら怒鳴り散らす。
そんな響弥を虫でも見るかのような目で見る悠叶。
「やっぱりあなたは嫌いだ。いつも迅鵺さんの側に居て目障りだったんです。しかも、自分の気持ちに否定するなんて・・」
何かを抑え込むような震える声で言って、言葉を切ったかと思うと、悠叶は急に声を荒げた。
「だったら、迅鵺さんに近付くなっ!良い顔をして腹ん中じゃ迅鵺さんを自分のモノにしたい癖に認めようともしないっ!!俺はっ、俺はっ・・あなたと違って自分の気持ちをちゃんと認めてるっ!それでも、迅鵺さんに触れてはいけないと分かってるからっ・・傍に居るだけで堪えてるんじゃないかっ!!」
店内には悠叶の悲痛なまでの声がビリビリと響き渡り、悠叶の荒い呼吸音だけが聞こえている。
悠叶の迫力に響弥は言葉を失っていたが、我に返ると笑いが込み上げてくる。
「はっ、ははっ・・その口がよく言う・・」
“迅鵺を犯したじゃないか”
そう言いそうになったけれど、今の悠叶は響弥にも見える姿だし、なんて言ったらいいのか分からなくて、悔しそうにグッと堪えた。
“迅鵺さんが好きなんですね?”
悠叶の言葉が響弥の頭の中で何度も繰り返される。悠叶に言われたことで、今まで否定してきた迅鵺への気持ちが溢れ出ていた。
響弥は迅鵺の淫らな姿を見てしまってから、気付かないフリをしていただけで、確実に響也の中で何かが変わってしまっていた。
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