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第五章
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「────響弥さん?どうしたんすか?」
迅鵺は、突然の訪問者に少し驚いてる様子。それもその筈だ。今の時刻は夕方の五時頃で、あと三時間もすれば開店時間。
それなのに、なんの連絡も無くいきなりマンションに訪ねて来たのだから。
「急に悪りぃな・・すぐにでもお前に話さなきゃならねぇ事が出来た。」
いつになく真剣な表情からして、大事な話だということが分かる。
迅鵺は、一体どんな話があるのだろうと思いながらも響弥を部屋に上げた。
「────話って何すか?」
冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターのペットボトルを響也の前にあるテーブルに起き、お互い向き合う形で座った。
「鮎沢とは必要以上に関わるな。」
いきなり強い口調で伝えられて、迅鵺は戸惑った。
「まだ悠叶さんのこと疑ってるんすか?悠叶さんは悪い人じゃ───」
「迅鵺、お前は一体アイツの何を知ってるって言うんだ?結局は表面のアイツしか知らねぇじゃねえか。」
迅鵺の言葉を遮るように言う響弥に、迅鵺は少し腹が立った。───いや、単に否定したいだけなのかもしれない。
「・・・響弥さんには色々感謝してますけど、なんで悠叶さんにだけはそんなに突っ掛かるんすか!?実際、今日まで何もなかったじゃないですか!」
つい、迅鵺まで強い口調になってしまう。
けれど響弥は引かなかった。膝の上にある手はギュッと固く握られていて、響也の怒りが伝わってくる。
「今日まで何もなかっただと?それは、お前が何も知らないだけだ!俺はついさっき鮎沢と話してきたんだぞっ!アイツはお前の事を特別な目で見てるっ!」
響弥の言葉に、迅鵺は言葉が出なかった。
今まで考えないようにしてきた可能性を言われてしまったからだ。
“悠叶さんが、俺を特別な目で見てる?”
「なっ、何言ってるんすか?・・ははっ、だって俺も悠叶さんも男っすよ?」
同様を隠すように空笑いする迅鵺。落ち着かない様子で響也を直視出来ないでいる様子に、響弥は妙に背徳感を覚えたが響也にとって、いま大事なことはそんなことではない。
「世の中にはゲイという人種も居るだろ。鮎沢がそうなんじゃないのか?普通に考えて定期的にホストに通う男が居るか?冷静になって考えるんだ迅鵺。」
響弥の“まとも”だと思える言葉に、迅鵺は考えざるを得なくなってしまう。
迅鵺は悠叶が現れてから何も起こらなくなって、心底安心してしまっていたのだ。
知らず知らずに居心地が良い空間(悠叶)に、居座って忘れようとしていたのかもしれない。
あの男にされた事実を。
そして、今でも燻ってるあの強烈な快楽を。
迅鵺は、突き付けられた現実に自然と体が力んでしまう。固く結ばれた口は、力が入っているせいで顎がじわりと疲れてくる。
時間にすればほんの数秒だが、長くも感じられる間(ま)が二人の間(あいだ)に流れて、迅鵺は諦めたように重たい口を開いた。
「────確かに響弥さんの言う通りっす・・悠叶さんが良い奴でいてくれた方が、俺にとって都合が良かったんすよね・・きっと。」
迅鵺の肩を落とす姿は響弥にとっても辛いものだ。
だけど、迅鵺が悠叶によって傷付けられる姿は決して見たくはないのだろう。
今まで必死に認めようとしなかった迅鵺への想いを認めてからの響弥の決意は固いものだった。
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